後輩がかわいくて仕方がねぇ
「おいテキサス、ちょっとこっち来い」
「ん? どうした?」
「この前パフェに連れてってやるって言っただろ? この後空いてるか?」
「……パフェ」
顔こそ思案しているように見えるが、尻尾はふるふるしてる。お前もうちょっと隠す努力とかした方がいいんじゃねぇか? 隠す気ないだろ。いやまあ見てて悪い気分ではないからいいけども。
「車を用意しよう」
「いや、どうせ二人だ。俺のバイクで行こう」
「……バイクなんて持ってたのか?」
「使うことなんてほとんどないから動くか怪しいがな」
「……心配ないのか?」
「メンテナンスはしてあるから問題ないと思うがな」
本当か……? そう訝しんでくるテキサスを無視してバイクのキーを取り出す。出勤には使ってるから二人乗りしても問題ないだろう。いや問題とかないでくれ。問題があるバイクに乗ってたとか考えたくもねぇ。
「ほら、行くぞテキサス」
「……ああ」
そう言いながらついてくるテキサスは、尻尾がしゅん……と擬音がつくような様子だった。
いや大丈夫だから。壊れてねぇから。俺の信じる俺を信じろ。
結局無事に辿り着いた俺たちは、スイーツ通りを歩いていた。この世界でも随一と言っていい都市の龍門は、西洋問わず様々なものが行き交う。ここも例に漏れず多様な土地のスイーツが置いてあるらしいんだが……ストリートに居るだけで甘ったるい匂いが漂う。甘いもんは嫌いじゃねぇが限度はあるだろ。
それでも、見渡してみれば気になるものはいくつか見えてくる。
テキサスもこれから食べるクレープに想像を膨らませてるのだろう。
にしても甘いモンの匂いがすごいな……。
「いくぞタナトス。こっちだ」
「……はいはいテキサス。分かったから手を離せ。自分で歩けるっての」
曰く、目立つところにはないらしいが……なんでそんな店を知ってるんだ。ロドスの連中にでも教わったか?
あの連中、どうやら女性率も高いらしく、時折そっちの知識で動かされるんだよな。今回に関しては特に問題ないんだが、エクシアあたりが絡むとこれがまた面倒なんだ。バーでの飲み比べだの、アングラな武器商の構える店だの。
ただの製薬会社からなんでそんな情報が出てくるんですかねぇ。
「ここだ」
「これはまた……随分と酔狂な……」
ネオンライトが鬱陶しいほど煌めく龍門にしては珍しく、歴史的な外観を模倣したのであろう白塗りの建物が見える。どうやらここが件の店らしい。場所的には確かに通りのはずれにあるが……外観で人が寄ってくるのか。それに加えてパフェも美味しいともなれば人が集まるだろう。
さすがにもう日が沈む頃だ。数人しか並んでいない。これならすぐに食べられるだろう。
「さて、なにを食べるつもりなんだ?」
「そうだな……」
渡されたメニュー表を見ながら考え込んでいるが、視線の先には二つのパフェ。……お前二つも食いたいのか。とはいえ、夕食前だということもあって二つも食べるのは……と考え込んでいる様子だ。
「……そんなに二つ食いたいなら食えばいいだろ?」
「いや……予算が……」
「予算? いや俺が買うって話だったろ?」
「……」
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