お前の休みねぇから!
「ボス、俺やっぱこの会社やめてぇわ」
「あ? なに言ってんだお前? そんなの俺が許すわけないだろ」
「俺の期待を返して……」
流石のボスも辞表を作って退社したい旨を伝えれば折れるだろうと思ったが現実は非情だった。おいおい、うちの会社って一応企業のはずなのにやめれないとかどうなってんだよ。
一度入ったら二度と出られないとか終身刑の囚人じゃあるめぇし。はー、やべ。さっきよりもやめたい気持ちが強まってきちまったな。あとついでに世界滅んだ方がいいと思う。こんな世界は間違ってんだろ。
……無理だな。ボスなら俺が世界だ、程度のことは言うだろ。この人のぶっとんだ頭のネジは誰が拾ってきてくれるんだ? 少なくとも既存のメンバーじゃねぇな。任せた次世代のメンバー。……はて、次世代のメンバーとか入るのか? こんなブラック企業に?
無理か。龍門じゃとんでもないことやってるやべー会社だってことは子供だって知ってる。
……諦めよ。こんなクソ企業に入りたいとか言う命知らずはソラだけでいい。
「期待とかお前なに冗談だろ? 俺たちがペンギン急便だろうが」
「さも当然かのように俺を巻き込まんでほしいんですが?」
「なーに言ってんだ。お前が就いてる職考えてみろ」
ペンギン急便経理担当……いや、銃の修理とか龍門近衛局に頭下げたりだとか間違いなく一般的な経理担当じゃねぇだろどうなってんだボス。そもそも一般的な企業ですらないけど。ボスからして型破りな人だしな……このセンスのカケラもねぇ社名といい……。
「お前社名に文句付けたら承知しねぇからな」
「なんで考えてること分かるんだよ……」
「そりゃ俺がなんでも知ってるからだな」
「読心術でも使っただろボス。面白みがねぇ」
こういうのは駆け引きだろうが。読心術も駆け引きとは言えるがな。
「……ってそういうことを言ってるんじゃねぇんだよ! 俺をあんたらみたいな街中でドンパチするようなヤツと思われんのが癪だってことだ!」
近衛局に謝りに行ったときに一本角の緑色の髪したナイスバディな姉ちゃんに憐みの視線と同情の言葉を戴くの心に来るんだからな!?
あの姉ちゃんと飲みに行きたいかもしれないな。あの人も苦労人っぽいし……。
「そりゃ災難だったな」
「この……他人事だと思いやがってこのペンギン……」
「まあでも、世間的に見ればお前もおっかねぇやつだよ。俺らは別におっかねぇ企業ではないが」
「どこがだよ」
街中でドンパチするやつらのどこが危なくねぇんだよおかしいだろ! つか龍門がおかしいんだよ! どいつもこいつもショーみたいにおっかなびっくり楽しみやがって。
ドンパチやった後には必ずうちに勝敗の問い合わせの電話が来るとかどうなってんだ! 暇すぎんだろ龍門の人間!
「……で?」
「は?」
「は? じゃないだろ。真意はなんだ。お前はクールな男だ。俺ほどじゃねぇがな。そんなお前が安定した生活を投げ売ってまで辞めたいと抜かしやがる」
安定した生活……ね。まあ確かに給料はいい。龍門の中でもトップクラスなのは間違いない。経理上でボスに言われていることはただひとつ。
経理が厳しくなったら言え。自分の給料から差っ引こうとするんじゃねぇ。
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