ハーメルン
あなたが結月ゆかりになって弦巻マキに食われる話
あなたが結月ゆかりになって弦巻マキに食われる話

 今日は12月21日。あなたは男性で、結月ゆかりのゲーム実況動画を投稿しています。ここ数日は都心のビジネスホテルに滞在しており、明日帰る予定です。

 ダブルベッドにユニットバス、机、小さなクローゼット、冷蔵庫など、一人で泊まるには悪くない部屋です。日が暮れてからホテルに帰ったあなたはベッドに突っ伏し、一日中用事を済ませるのに出ずっぱりで溜まった疲れからか、あっという間に眠りに落ちました。


 空腹のせいか、あなたは深夜に目を覚まします。時計を確認すると午前2時を回った頃でした。深夜のホテルは、住み慣れていない部屋と静まり返った時間帯のせいでどこか現実味が薄れ、奇妙な感覚がします。寝なおそうとしても寝られず、気分転換もかねてシャワーに入ることにしました。

 ベッドから起き上がり、着替えを取ろうとしてキャリーバッグの中を覗いたあなたは、入れた覚えのない服を見つけます。
 不思議に思いながら手にとって広げてみると、どうやらパーカーのようです。黒地のパーカーを基本としてウサ耳がフードに付き、裏地が赤くなっています。考えるまでもなく、あなたの大好きなキャラクター、結月ゆかりが羽織っているものであると確信します。

 あなたはキャリーバッグに入れた覚えがないどころか、所有してすらいない服が入っていることを奇妙に思います。家に無いものを間違えて入れるわけもなく、ホテルの部屋以外ではキャリーバッグを開けていないので、どこかで紛れ込むわけがありません。
 つまり、入っているこの状況は、絶対に有り得ないのです。

 有り得ないはずなのに、そんな異常現象を差し置いて、あなたは服が気になってしょうがありません。パーカーを持ってみると、しっかりとした少し厚めの生地で、縫製も丁寧です。通販で買えば手に入るような、安物のコスプレ服ではないことがわかります。体に当ててみると、胴回りはほぼジャストサイズですが、袖丈は少し短いです。彼女が着るからこそあのダボっとしたサイズ感になるのだろうと感じます。現実にいるわけでもないのに、そんなまじめな感想を抱きます。

 奇妙な状況ですが、好きな人のものを目の前にして鼓動が早まり、視界が狭まってくる気がします。まるで、服に魅了されている気分です。もしかすると、他にも紛れ込んでいるかもしれない。そう思ってキャリーバッグをひっくり返すと、入れた覚えのない服が次から次へと出てきました。

 紫のオフショルダーワンピースにニーソックス、靴、下着……。彼女の服が一式入っていました。どれも触り慣れていない、女性の服です。壊れ物を触るようにそっと手に取ってベッドの上に並べれば、中身のいない彼女の姿が完成しました。しばらく眺めていると、服の魅力に引き込まれていく感覚がするでしょう。

 フードの先から舐めるように視線を這わせ、ワンピースの裾を凝視したところであなたは我に返りました。軽く頭を振って、気分転換にシャワーを浴びることにします。

 頭からシャワーを浴びると、汚れと一緒に一日の疲れが抜け落ちていきます。顔を洗うと、だいぶ意識がすっきりしました。しかし、体を洗うと、その刺激のせいか妙に体が痒くなってきます。何度も頭を洗い、顔を洗い、体を洗い、ようやく満足しました。それがマッサージのような効果をもたらしたのか、体つきがすっきりした気がします。ホテルの備え付けのシャンプーや石鹸の質がいいのか、どことなくいい香りもします。

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