99話 イチジ
ヴィオラから事前に敵の特徴を見せてもらっているコアラ達とは違い、この国へ飛んで来たばかりのイチジ達は一切の敵の情報を得ておらず、ゴジから聞いているのは──。
「俺の部下3人はそれぞれに自分の標的を決めているから、兄さん達は彼女達が戦いやすいようにその他の敵を倒してね。」
たったこれだけである。
当然これは兄達の力を信じるゴジの信頼故だとイチジ達も気付いてはいるので、不満はない。
コアラ達3人が各々標的の元に向かったのを確認して、イチジ達も動いた。
「投石パンク!」
上から黒いシルクハット、射撃用のゴーグル、白いマスクを付けて黒いコートを纏った男が空中にいるイチジ達に両腕を向けると、腕を“破裂”させて弾丸を放つ。
イチジは自分の標的にこの男を選んだ。
「俺はコイツをもらう。」
この男はピーカ軍のグラディウスである。
「「了解!」」
イチジの言葉にニジとヨンジは頷いて彼の傍を離れて、城内に飛び込んだ。
グラディウスの放った鋼鉄の弾丸が無防備なイチジの体にぶつかる直前でグラディウスが呟く。
「破裂弾丸!」
イチジの体や顔に衝突した鋼鉄の弾丸がぶつかる度にバンバン…と破裂した。
「俺はパムパムの実の破裂人間。パンクさせられるものは、俺自身の体。そして、俺の触れた無機物。俺の腕を破裂させて弾丸を放ち、その弾丸を破裂させた。流石のスパーキングレッドでも無事では…。」
グラディウスはイチジを倒せないまでも大ダメージを与えたはずだと雄弁に語った。
「俺の安否を心配してくれているのか?優しい事だ…だが、安心して欲しい。この通り痛くも痒くもない。」
グラディウスの攻撃はイチジのレイドスーツ、外骨格、武装色の覇気の前に無惨に敗れ去る。
爆風が晴れると浮遊装置を使って空中に浮き続ける無傷で口角を上げてニヤけるイチジがおり、彼はゆっくりと城の窓にある柵に足を掛けてから、城内に入ってグラディウスの前に降りて来た。
グラディウスの頭からドクン…ドクン…と音がなる度に頭に被った帽子が風船のように膨れていく。
彼はイライラすると頭に血が上り、無意識に破裂の能力を溜め込んでしまうのだ。
「チッ…物語の英雄は物語の世界に帰るがいい…“腕破裂”!」
グラディウスは右腕に破裂の能力を込めて風船のようにパンパンに膨れさせてイチジに殴り掛かる。
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