ハーメルン
ドクターゲロに転生したので妻を最強の人造人間にする
7話 根菜ではなく葉物野菜

 バーダックから話を聞いて、カカロットを地球って星に送り出した時のあたしはまだ半信半疑で、確信はなかった。
 でも、惑星ミートへ向かったセリパ達がフリーザ様……フリーザの側近のドドリアに殺されたとバーダックから聞いて、ようやく確信した。フリーザは、あたし達を皆殺しにする気だって。

 バーダックはあたしと別れた後、フリーザと戦う仲間を募りに、そして来ない奴はイチかバチか逃げろと警告しに行き、あたしも後を追ったけど……あの様子じゃ、誰も信じなかったみたい。
「ぐぼあっ!?」
「チッ、悪いな爺さん!」

 だけどその際、バーダックは通りすがりのお爺さんとぶつかって、跳ね飛ばしてしまった。
「ちょっと、バーダック! 大丈夫かい、お爺さん?」
 あたしは咄嗟に倒れたまま動かない爺さんに駆け寄っていた。周りにいる他のサイヤ人は、「バーダックの奴、今日は荒れてるな」とか、「間抜けな爺さんだぜ」と笑うだけだからね。

「早くメディカルポッドに……あれ? 平気そうだね」
 バーダックとぶつかった時に鈍い音が響いていたから、下手しなくても重傷だろうと思って助け起こしてみたら、意外とそうでもなかった。スカウターで測定したけどしっかり反応があるし、苦しそうな顔をしているけど呼吸もしっかりしてる。

 それを確認してから気が付いたけれど、メディカルポッドを使っても治療が終わる前にこの星は終わるんだった。
「ちょっと、頭でも打ったのかい?」
 そう言って軽く頬を叩くけど、爺さんは「うぅむ」って唸るだけで起きる様子はなかった。この爺さんは、気を失ったまま死ぬのかもしれない。

 でも、考えてみればその方が幸せかもしれないね。フリーザに裏切られたと知ってから死ぬよりも、気が付いた時にはあの世だったほうが。
「そうだ、ラディッツ」
 今頃他の惑星で、ベジータ王子達といるはずの息子の事が脳裏をよぎった。

 今ならあたしのスカウターで、あの子に最期の言葉を残せる。でも、フリーザ軍に聞かれたら、せっかく生き残れそうなあの子の身まで危険に晒されるかもしれない。
 やっぱりやめようか……。

「ぬぅぅ……」
 そう思った時、助け起こした爺さんがまた呻いた。起きたのかと思って顔を見ると、まだ瞼は閉じたままだった。
「そうだね、やっぱり声をかけよう」
 そして、そう思い直した。

 フリーザに裏切られた事に気が付いていないふりをして話をすれば、大丈夫だろう。多分だけど。
「ラディッツ、聞こえるかい?」
 スカウターをして呼びかけると、残念だけどラディッツは出なかった。戦闘中か、それとも宇宙船でコールドスリープしているのかもしれない。

 最期に声が聞けないのは残念だけど、仕方ないか。
「ラディッツ、よく聞くんだよ。惑星ベジータに彗星か小惑星かは知らないけど、危険が迫ってるんだ。バーダックが飛び出していったけど、ダメかもしれない」
 何事もないのに急に母親が連絡したらおかしいだろうから、とりあえずそう言っておく。

 それから、しばらく話してから通話を切って、スカウターを外した。
 フリーザ軍に裏切られた事を秘密にしたこと以外は、思いのままに話したから具体的に何を話したかは覚えていない。元気でとか、長生きするんだよとか、お前なら頑張れるとか、良い人を見つけるんだよとか、色々だ。

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