女神選抜大会〈アージプリムティア〉2
露店で昼食を済ませ、大道芸を見物し、一息ついたら、タマラの試合だ。
『第八試合開始!』
『『展開!』』
タマラの宝石は、剣に姿を変えた。
煌びやかな細工がちりばめられた聖剣で、とっても派手である。
存在を誇るかの様に、タマラの聖剣が唸りを上げる。
先手は、当然の如くタマラだった。
『場合の数!』
『え、なにそれ』
相手は呆けてしまったので、クリティカル成立だ。
『おぇぇおあぁわっ!』
タマラの対戦相手は、やっぱり光の中へ消えた。
”場合の数”とは数学の専門用語である。
色々端折りすぎてよく分らない単語になっているが、ぶっちゃけると、マルチエンドゲームのエンディング数の事だ。
もっと細かく言うと、場合とは分岐の選択肢に相当する。
単語なんて覚えなくても良いから理解しておくと、人生で大活躍する考え方〈ツール〉だ。
「おい」
流石の料理長も驚きを隠さない。
「ありゃぁ統計確率〈ロストテクノロジー〉じゃねぇか」
「そーらしーでーすーねー」
三〇〇年前に消失してしまったらしい、今では断片が残るのみの学問だ。
もちろんこの世界での話。
「マスターよ。お前が仕込んだのか」
「訓練の合間に基本〈大数・小数〉の話を小話的にしたんですが、知らぬ間に、たった半年で体系化やがったようです。一人で。あのお嬢様は」
「ポーラお嬢ちゃんが有利かと思ったが、どうなるか分らなくなったな」
対戦相手はステージの外で地団駄を踏んでいる。
一回の攻撃でHPを全て失えば……以下略。
『才能なんて大っ嫌いーーーーーーっ!』
過度な嫉妬は、適正な判断を阻害するから要注意だ。
◆
試合の合間。
ポーラの様子をこっそり見に来た。
そうしたら意外な事に、タマラと一緒にストレッチをしていた。
なれ合いしてなけりゃ良いんだけど。
「タマラさん。勝負は勝負です」
「勿論ですわ」
老兵は死なずただ去りゆくのみ、か。
俺は自分が恥ずかしい。
「それで、なにか在りました?」
「ご安心なさって。何もありませんわ。純粋な師弟関係ですから」
「別に気にしてませんし!」
「あ、あそこまでしましたのに……」
「はい?」
「乙女のプライドが……ズタズタです……」
「その気持ち、よぉぉぉく分っちゃいますー」
何の事か興味が湧いたが盗み聞きはマナー違反だ。
さっさと立ち去ろう。
◆◆
タマラの成長は予想以上だが、ポーラも十分強い。
見方を変えると、二人に敵は居ないと言う事だ。
ポーラとタマラが闘う決勝戦までマッタリしよう、と思った矢先の事だった。
闘技場を揺るがす程のどよめきが起ったのである。
『『『おぉ!』』』
闘技場の複数の舞台に、視線を、アチラコチラへと走らせれば、その内の一つで倒れている副生徒会長を見つけた。
「あの副生徒会長が、負けた?」
思わず零してしまったのは、予想外だったからである。
単純な知識量なら生徒会長〈タマラ〉を凌ぐメガネっ娘だ。
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