ありし日の記憶
大学卒業後、羅輯はアニメーターとして管理局に就職した。
当時、管理局公式アニメというのはつまらないことで有名だった。
その間にも丁儀とかは量子スタジオで成功を収めていた。
普段は周りのことに無頓着な彼も、この時ばかりは悔しさを覚えた。
「・・・大丈夫か?無理はするなよ。あっ、そこは書き直せ」
「わかりました、レジアス監督」
レジアスは監督として、常に羅輯の様子を気にかけてくれた。
そんな時、交通事故で脚本担当が入院することになった。
そんな時、彼が真っ先に代理を立候補したのだ。
天は羅輯に味方していた。この回は水着回であると同時に恋愛回でもあったのだ。
羅輯の恋愛に関する才能は爆裂した。上層部は誰もがうなった。
だが、ただ一人だけ羅輯の脚本に手直しを加えた者がいた。
「実にいい。だが、不要なギスギス感が残っておる」
彼の手直しによって、その脚本はさらに輝きを増したのだ。
その彼こそが、レジアス・ゲイズであった。
レジアスは羅輯の才能を見出し、鍛え上げることにした。
「貴様はワシの胃薬の消費量を増やすつもりか?書き直せ!」
「だからギスギスしすぎとるといっておる!胃に穴が開いたではないか!」
「ふん。次の回は貴様一人に任せても良いだろう」
「個人制作アニメだと?管理局では無理だ、貴様一人でやれ。
安心しろ、お前だったら一人でもなんとかなる。
ただ、ほのぼのでもギスギスでもないお前の作風はなんとかならんのか?」
レジアスは常にストレスで胃が大変なことになっていた。
だから、優しい世界を創り上げることを彼は好んでいた。
一方、羅輯は優しさと厳しさが混ざった、すごい世界観を創り上げた。
その世界観が最も現れたのが、犯人の声だった。
万引きで刑務所に入れられたヒロインとの恋を描いたこの作品は反響が大きかった。
この作品の最大の特徴は、善人も悪人もいないということであった。
警察も、看守も、クラスメイトも、全員が清濁を併せのんでいるのだ。
そして、常に誰もが苦悩しながら、優しさを忘れていない。
この作風は後の作品にも引き継がれていった。
それが最も現れたのが、桂言の葉の庭だった。
皆が悪の面を持っているが、同時に善人としての面を持ち合わせているのだ。
ただし、主人公の父親を除いて。あと、親友も除いて。
「・・・胃に穴が開いたぞ。胃薬と酒持ってこい」
「わかりましたよ。レジアス監督」
「・・・今はお前も監督か」
時速0.5のときは会う機会がなかった。
なぜなら、羅輯が外に出られなかったからだ。
それでも、レジアスは仲の悪いはやてに協力して、羅輯の身を守った。
そして、ある日、君の縄の構想を練っているときに、通信が入った。
少し遅刻してしまったが、墓地に着いた羅輯にレジアスは脚本を渡した。
夕日は墓地を血のように染めていたが、綺麗だった。
「・・・綺麗な夕焼けですね」
「羅輯、これはアニメの落日だ・・・」
彼は倒れた。
「レジアス中将?レジアス中将!レジアス中将!!」
葬式には多くの者たちが参列した。
地上本部局員はもちろんのこと、本局の局員までもが参列していた。
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