第10話 片岡優希とちょーかわいい巨人
「よし、よし……」
「最高の手応えや! いけるで! これはいけるで!!!!」
「ああ!? なんやこのゴミロバ! なんで伸びないんや!!!!!!!! おかしいやろ!?」
休日の午後、マンションの一室でテレビ中継を観て叫ぶ1人の女がいた。
春競馬でロバに3000円騙し取られる者、園城寺怜。
そのひとである。
「なんで周りみんなサラブレッドなのに、うちの買った馬だけロバなんや……」
怜は麻雀中継を観ている時の20倍は熱の入った応援をして負けてしまったので、すっかり意気消沈してしまう。当たり前だが、勝手に怜が負けた牡馬をロバ認定しているだけで、彼もれっきとしたサラブレッドである。
なお、競馬に3000円以上賭けると竜華に怒られるため、1日に3000円以上負けることはない。怜はちゃんとルールを守れる女なのだ。
「がっかりしたわー」
怜は新聞をまるめて床にポイすると、ソファーに寝転んでゴロゴロし始める。寝返りを何度かうち、うつ伏せでソファーに顔を埋めるとだいぶ気が晴れてきたので、テレビで竜華の試合を応援することにした。
『さあ、松山の守護神!!! 姉帯豊音の登場です!』
『ちょーがんばるよーーー』
そう言ってファンに笑顔で手を振る姉帯さんの姿がアップで映し出されている。
「姉帯さん、デカいのにめっちゃかわええなあ」
姉帯さんの笑顔にお馬さんに傷つけられた心が癒される。高校時代に対戦したことがあるので、なんとなく親近感もあった。
「こんなに有名になるなら、サイン色紙持ってこられた時、ウチが書くんやなくて姉帯さんにサイン書いて貰えば良かったわ」
姉帯 豊音 昨年度成績
ドラフト1位 個人戦順位 6位
宮守→松山
4勝6敗22S
松山フロティーラの守護神、高い身長を生かした角度のある闘牌で相手を圧倒する
新人王 最優秀防御率(1回)
国民麻雀大会プロの部優勝(1回) 敢闘賞など
彼女の強みは六曜と呼ばれる特殊能力の多様性にある。獅子原さんもそうだが、1つの能力に縛られない能力者は、対策がされにくい。
六曜すべての能力が広く知られており、研究されているにもかかわらず対策が難しいのは、彼女の完成度の高さをしめしている。
「先負とかいう追っかけリーチで直撃狙える能力が、本当に強いわあ」
姉帯さんの対戦相手は、基本的に警戒してリーチをしてこないため、ダマで戦うことになる。リーチを絡めた高い打点での和了が減り、リードを維持しやすくなるという理屈だ。それに、仏滅の卓上全体で有効牌をひきにくくする能力があわさると対戦相手に、全く攻略の糸口を掴ませない。
松山 150800
恵比寿 110700
神戸 72600
佐久 65900
ニコニコ顔の姉帯さんと、各チームのポイントゲッターの焦りの表情の落差が激しい。2位につけている恵比寿の三尋木さんも、すでに三位に転落しないような打ちまわしにシフトしており、終戦感が漂い始めている。
流局
ノーテン ノーテン テンパイ ノーテン
「やってることちょーえげつないよー」
怜は背伸びをしながら、非常に完成度の低い姉帯さんの物真似をする。
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