1スレその2
ある建物の中。
一般的なオフィスのような内装の中で一人男が死んだ目をしてデスクについてパソコンに何かを入力していた。
「......あ~...。うぅ......」
意味もないような唸りを上げながら液晶と向き合っている。
すると急に頬に冷たい何かを当てられる。
横を見やると同僚が気の良さそうな笑みを浮かべながらコーヒーを差し出していた。
「おつかれさん。少し休んだらどうだ?開発主任サマ?」
「葛木.....」
自分にコーヒーを差し出して休憩を推奨する同僚の名を口にする。
しかし目の前の書類がまだ終わっていない事を思い出して、液晶に視線を戻す。
「...悪いがあともうちょっとで終わるんだ」
「そっか。なら待っておくわ」
そう言うと葛木は隣に座って頬杖を突いて虚空を眺め出した。
書類仕事も終わったので葛木と共に休憩所へと行く。
正直あそこで休んでいてもよかったが、休憩所には飲料や食品を売っている自販機とポットがある。
まだ飯を食べていなかったし、正直腹が減っていた。
休憩所で何か腹に入れるのも良いだろう。
俺は食品自販機からインスタントの蕎麦を買って、ポットに水を入れて沸騰するまで待つ。
その間も葛木と話していた。
「いやそれにしても開発主任ってのはさ、色々やること多そうで大変だなぁ。.....俺が肩でも揉んでやろうか?」
葛木は冗談めかして両手を見せてワキワキと動かす。
確かに肩は凝っていたが、友人に揉んでもらおうと思うほど深刻なわけではない。
しかしそれにしてもどうしたのだろう?
目の前の男が俺を気遣うなんて。
明日には槍でも降るのではないだろうか?
「おいおいなんだよその目はぁ。友達として心配するのは当たり前だろ?初めて作った怪人があんなのなんだから。疲れてるんだろ?」
葛木は心外だと言わんばかりな調子で物申してくる。
同時に彼が心配しているのは開発主任という役職の職務の苛烈さだけではなく、俺が掲示板の安価に従って作った怪人のデザインを見たことが原因だということが分かる。
まぁ気持ちは分からなくもない。
俺だって身近な人があんなの作ったら心配する。
俺は軽く笑みを浮かべると首を横に振る。
「別に疲れてないし、なんともねぇよ。怪人もただなんとなく作っただけだしな」
そう言うと今度は葛木がジト目で見てくる。
「なんとなくであんなもの出来たらそれこそやべぇだろ.....。まっ、大丈夫なら別に俺はなんでもいいけど」
そう言って笑う葛木。
俺は彼に対して口を開いた。
「てか俺の方が心配だね。...どうせお前、今回も課金して金欠なんだろ?」
そう言うと葛木はビクンと体が跳ねた。
図星を突かれたからだろう。
「...よ、よく分かんない。ちょっとイベントが始まってな」
「.....ここ給料良いんだから課金最低限にしてお金貯めればそこそこ良い生活出来るぞ」
そう言うと葛木は鼻で笑う。
「ハッ!分かってねぇな。せっかく金が一杯出るからここに入ったってのに全部ぶち込まなければ嘘ってもんだぜ!」
「なんの嘘なんだよ.....。てことはてめぇまた飯食ってねぇな」
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