2スレその2
とある路地裏。
スーツやドレスなど正装に身を包んだ人々が一つの建物の中に入っていく。
そして俺も例外でなく、ボスに借りたスーツに身を包んでいる。
「......サイレント・アズールの方々ですね。どうぞ」
扉の前に立つガードマンが俺たちに通行の許可を出す。
ボスは慣れたものでどうもと返答すると扉を開けて階段を下りる。
俺はそれについて行くのみだ。
「緊張しているのかい?」
「...まぁ、そりゃ」
扉を抜ければまるで社交界だ。
このような場所にはまったく縁がない。
格式が高そうだ。
するとボスは目の前で笑った。
「まぁいずれ慣れるさ。開発主任であればここに来るのも珍しくないからな」
ボスは笑ってそう言う。
「はぁ.......」
ボスの言う事に控え目に頷く。
周りでは豪華なドレスや清廉なタキシードに身を包んだ人達が酒を酌み交わしたり、話をしたりと思い思いの時間を過ごしている。
そして俺たちは奥の厳重に守られている扉の中に入る。
さっきまでの喧噪と打って変わった静かな気配。
全体的に薄暗い階段を下りていると、ある古い階段が目の前に現れる。
ボスはその先へと続く扉のドアノブへと手を掛ける。
すると多くの豪華な正装を身に纏った人びとがまるでイベントが始まるのを今か今かと席に座って待っていた。
そして彼等全員は一心にある一点を見ていた。
「どうです!今回の目玉商品の一つです!かつて新潟を守護していたヒーローの一人、『星ヒカリ』の全身サンプル!その体つきからは考えられない程の怪力で敵をなぎ倒していた益荒男。今それがあなたの手に!!組織のインテリアに飾るのも良いし、その特異な怪力を目当てに怪人の材料にしても良い!これほど使用用途に富んだ物品は他ではありえない物ですよぉ!!」
まるで興奮したかのような口調で観客を煽る司会の男。
そしてステージの上には大きなカプセルに液漬けになっている男。
随分前に息絶えているようだった。
何人かの観客が一斉に堰を切ったかのように入札を始める。
どんどんと吊り上がる値段。
ここは悪の組織による悪の組織の為に月一回開かれるオークション、ヴィランオークションの会場である。
ここで売っているのは活動の助けになるような機械や兵器、戦力や材料などだ。
今回俺たちはそこに怪人制作に使える材料がないか見に来たのだ。
目の前の商品は確かに怪人作成の素材としては申し分のない物だ。
しかし買うかどうかの判断は俺ではなくボスがする。
まぁ組織の金を使って買うのだから当たり前ではあるが。
隣のボスを見やると入札していない。
どうやら目の前の商品には関心がないようだ。
どうやら買い手が決まったらしく、その商品は奥へと舞台袖へと持っていかれる。
そしてまた次の商品が流れてくる。
「お次の商品はこれだ!持ち主の意識と引き換えに大いなる力を与える妖刀無銘!博物館など一般に展示されているような創作物とは訳が違う真の業物!名前すら与えられないことからそれは推して知るべきでしょう!お手入れの方法は簡単!一日に必ず一人この妖刀で斬り殺して血を吸わせるだけ!!ここまで手入れの手間がかからずに大いなる力が手に入るのはまさに傑作と言っても良いでしょう!...あっ!ちなみにちゃんと毎日人を一人斬り殺して血を吸わせてください?用法とは違う方法で扱うことで起こる損害については当方はまったく責任を負いません故」
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