ハーメルン
異端児だらけの遊撃隊
心優しき子供

 午前は読書、午後は子供達と遊びを交えた体育と、充実した休日となったと思う。これなら明日からの訓練に向けての英気も養えただろう。午後は結構疲れたが、心地よい疲れなので良し。お風呂に入ってゆっくり休むだけで疲れは取れるくらいだ。
 あれのおかげで海防艦の子達とも仲良くなれた。占守は海上移動訓練の時に助けてくれたことがあったが、松輪と大東は大きく関わるのは今回が初めて。遊びを通して仲良くなるのは、孤児院で長く生活していた私、陽炎にはお手の物である。大鷹と同じくらい懐かれたのではないかと思えた。

 だが、どうしても1つ気がかりな部分が出てきた。体育に付き合う前に昼寝をしてしまったのだが、その時に見た悪夢。黒い軍勢の中に交じった、()()()()()()の存在である。
 つい最近まで一般人だった私に深海棲艦の知識はそんなに無い。侵略者であることしかわかってないと言えるくらいだ。ぶっちゃけてしまえば、黒いの以外いるなんて知らない。

「で、アタシのトコに来たってわけかい」

 本日3回目の執務室。夢を見たというだけではあるのだが、一応空城司令に報告しておこうと思った。馬鹿馬鹿しいと相手にされなくても構わない。話を聞いてもらうだけでも少しは落ち着けると思う。

「その夢、見始めたのはいつからだい?」
「艤装を装備した次の日かな。で、2回目がさっき」
「……そうかい」

 少し考え込む仕草。私の曖昧な夢についても真剣に考えてもらえるのは嬉しいことである。

 1回目は艤装に私が接続されたことによる影響、2回目は資料室で始まりの襲撃の資料を確認したことで何かが刺激されたからではないかと勝手に考えている。空城司令もそれはあり得ると頷いてくれた。
 髪の色が変わったりする程度には艤装が人間に干渉してくるのはわかっている。私はそれが逆で、艤装を従わせているらしいのだが、それでも何らかの影響があってもおかしくはない。

「赤い深海棲艦か。他に何か特徴はあったかい?」
「それが思い出せなくて。ぼんやりと赤いヤツってことくらいはわかった程度なの。多分それが一番思い出したくないところなんだと思う」
「そりゃあアンタの一番深い傷だろうからね。今まで思い出せなかった最悪な記憶が、艦娘になっていろいろ海のことを知り始めたことで刺激されてるんだろうさ」

 このまま艦娘を続けていたら、何かにつけて悪夢を見るようになるかもしれない。そうやって封印していた記憶を少しずつ少しずつ紐解いていき、両親の最期を思い出していくことになるか。

[9]前話 [1]次 最初 最後 [5]目次 [3]栞
現在:1/4

[6]トップ/[8]マイページ
小説検索/ランキング
利用規約/FAQ/運営情報
取扱説明書/プライバシーポリシー
※下部メニューはPC版へのリンク
携帯アクセス解析