ハーメルン
疑心暗鬼提督のブラック鎮守府再建
2話

 表向きは取り繕っていたものの、見え隠れしている問題点に頭を抱えながら広場に出ると、大淀が駆け寄って来た。

「提督、艦娘総勢40名集合致しました。」

「・・・早かったな
 揃っているならもう始めよう」

「ハッ!!かしこまりました!!」

 短く返答した大淀が艦娘の列に戻って行く、広場には学校にもあった簡易的なお立ち台があり、たった三段の階段が地獄への入り口にすら見えてくる。だがここから始めなければ成果は出せず、大本営の連中はニコニコ笑顔で罵倒してくるに違いない。あんなクズどもに良い思いをさせてやるのは反吐が出る。どうせやるからには自分のやり方で目にもの見せてやろうじゃないか。

「総員、提督に敬礼!!」

 階段を登り終えると号令と共に艦娘達が敬礼をしてくる。号令をかけたのは大淀ではなく・・・確か戦艦の長門だったはずだな。おそらく長門が艦娘達の取りまとめ役なのだろう。敬礼で答えて手を下ろせば一斉に気をつけの姿勢へと戻る。本当にこういうところは訓練が行き届いているようだ。ざっと見渡したところ全員が緊張で強ばっているのは予想通りだが、もう一つ気になったのは艦娘の構成が偏っていることだ。戦艦と正規空母はかなり揃っているが、その他艦種が少ないのは問題だ。前任者は戦艦と正規空母でごり押しする戦いを好んでいたのが良くわかる。そんな資源をどうやって集めていたかは・・・先が思いやられる。唯一良いことは被弾したままの艦娘が居ないことだろうか、まあどうせ汚職を隠すために上の連中の誰かがやったことだろうが。

 いつまでも黙ったままでは居られないし始めるか。

「初めまして、今日からこの鎮守府に着任した葛原だ。士官学校に在学中だったが殉職した前任者に変わって急遽着任することになった。至らないところもあるとは思うが宜しく頼む。」

 さてここからが本番だな。

「まず始めに着任にあたって大本営からの指令がいくつかある。通常の提督としての任と平行して前任者の汚職の調査と鎮守府の建て直し・・・そして殺された前任者の死因の究明だ。」

 やはりか・・・前任者の汚職の話では微動だにしなかったが、死因の調査の件では動揺が見られる。特に幼い駆逐艦達は動揺を隠しきれていないな。

「この件に関しては事前に大本営が調査を行ったが原因究明に至っていない。なので引き続き調査を私が引き継ぐこととなった。そして諸君らも知っているとは思うが、大本営は今回の事件を深海棲艦か艦娘のどちらかが犯人として捜査している。」

 どちらかと言えば艦娘が犯人だと言う説が濃厚だが、証拠もなく提督が艦娘に殺されたとなると初めてのケースなので、なぜそんな事が起こったのかを調べなければ安心出来ないのだろう。そうでなければ鎮守府の艦娘全員を解体することで解決しようとしただろうし。

「この件に関しては大本営側でもかなり揉めていて、過激なものは鎮守府の全艦娘を解体するべきだという意見もある。」

「そんなのあんまりだろうが!!」

「て、天龍ちゃん!?」

 おお、プレッシャーをかけてみたらさっそく一人耐えきれなかったか。

「前のクソ野郎がなにをしてきたかわかってんのか!?命令に逆らえないのを良いことに無茶な戦いで仲間が何人も沈められた!!罰として笑いながら拷問されたこともある!!さらには娼婦の真似事だってさせられた!!あんなクソ野郎は死んで当然なんだよ!!」

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