杯戸町ショッピングモール死体転落事件02
「死亡したのは、姥沢克代さん(31)。このショッピングモールにあるカフェ、あそこのカフェの従業員です」
「死因は、転落死ではなく絞殺です。首のスカーフの下に絞め跡と吉川線が確認されています」
「絞殺された後に、噴水に落とされたか……で、何でまた君たちがいるんだね。阿笠さん、蘭君。そして、コナン君」
「あはは……」
通報により警視庁捜査一課の目暮班が臨場する。
高木刑事と検死官の報告を聞くと同時に、現場に居合わせたという見知った顔……元部下の娘と友人、発明家と彼を慕う子供たち。そして、齢にそぐわぬ事件遭遇率を持つこの少年。
呆れる目暮に対し、少年ことコナンは苦笑いを返すしかなかった。
「死体を噴水から引き上げたのは君たちが?」
「いや、そこのカフェの従業員たち。死亡した女性の同僚じゃよ」
「その時、カフェの人たちもピアノを聴きにお店の外からホールを覗いていたみたいで。落ちて来た女性を見るなり、慌てて走って噴水に入って行きました」
「ピアノ?」
「はい、あちらの方が」
阿笠と蘭の証言を聞き取り、ピアノを弾いていた外国人の男性へと目をやる。死体が落ちて来た現場だというのに慌てる様子なくピアノの傍に佇み、どこか空虚を見つめていた。
「失礼ですが、お宅は? 日本語は通じますか?」
「グリジオ・サリエリだ。日本語は、日常会話なら話せる」
「お国はどちらでしょうか?」
「生国はイタリアだが、仕事で長いことウィーンに住んでいる。そこの大学で作曲や声楽、ピアノの演奏などを教えている。日本へは、日本の伝統的な音楽を学びに来た。パスポートはこちらに」
「拝見します。今日、こちらには1人で?」
「いや、連れがいるが……」
「おじ様!」
目暮から返却されたパスポートを受け取るサリエリ。彼の発言を遮った声は、若い女性のものだった。
野次馬の人だかりの向こうから、シルバーブロンドの少女と日本人の少年が人を掻き分けながらこちらへとやって来た。
「おじ様! 勝手にどこかに行かないでよ、探したじゃない!」
「サリエリ先生、何かあったんですか?」
「我がピアノに引き寄せられ、弾いている横に死体が落ちて来た」
「いや何で事件と遭遇しているんですか?! ってか、ピアノに引き寄せられないでください!」
「あのー……お2人は?」
「姪と友人だ」
恐る恐る間に入る高木に気付くと、少女はしゃんと姿勢を正し新品のアウターの裾を揃えて名乗った。
「失礼しました。フランスから来ました、ジャンヌ・エリス・オルタと申します。こちらのサリエリおじ様に付いてきて、日本に遊びに来ました」
「俺は藤丸立香です。海外の大学に通っています。今は、ジャンヌとサリエリ先生が来日するので案内役で一時帰国しています」
身分証として2人のパスポートを見せてもらったが、何ら怪しい点はない。現場に居合わせた無関係の人物と思われる。
ならば被害者の同僚というカフェの従業員に話を聞いた方がいいだろう。蘭の話によると、噴水に落ちて来た被害者を引き上げたのは3人だった。
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