ハーメルン
ガンダムビルドダイバーズ Re:TURN:TYPE
『寛容と不寛容』のロジック
ドーナッツの悪魔を知り、『他人の迷惑にしかならないが絶妙にしょぼく恨みを買わない"好き"』を知り、メイはふと、最近起こったことを思い出した。
「そうだ、お前と話したいことがあったのだ、エビ」
「で、あるか。なにかね」
「ママのところに相談が来てな。人間関係の問題だそうだ」
「で、あるか。だが私の意見が役に立つか?」
「役に立つかどうかは私が決める。私はお前の意見を求めているだけだ」
まるで人間の友達同士のようなことを、メイは言った。
メイの説明曰く。
相談者は、フォース・チームの人気者だったらしい。
本人はそうは言わなかったが、話を聞いていたマギーがそうだと確信していたという。
相談者には五人の仲間と一人の仲間が居た。
五人の仲間は人格者で、誰に対しても優しく、和気藹々とした空気を作るのに長け、周囲に合わせて譲歩と同調をすることができる普通の大人だった。
だが一人の仲間は心が狭く、他人の意見に合わせることがなく、口を開く度に空気を悪くし、そもそも上記の五人に対し攻撃的であった。
相談者はその六人全員と長い付き合いがあったという。
見方を変えれば、相談者が間を取り持っていたからこそ、このフォースはチームとして成立していたと言えよう。
だが、それももう限界だった。
相談者は決断を迫られていた。
五人を選んで、一人を追放するか。
一人を選んで、五人から離れるか。
五人と一人はどちらも悪ではなく、ゆえに相談者は五人と一人の全員を好ましく思っているということが、本当に最悪だった。
相談者が寛容であるがゆえのコミュニティは終わり、相談者はどちらかを選ばなければならなくなったのだから。
エヴィデンス01は木彫りの人形のように動かない表情のまま、ぽつりと呟く。
「『寛容の悪魔と不寛容の悪魔の論理的対立』か……」
「おいエビ。何人居るんだ、宇宙の暇な悪魔は」
「いや、これは地球の言語に翻訳したからこうなっただけだ。
前の悪魔と今回の悪魔は地球では悪魔としか言えない。
しかし地球人に発音不可能な別々の名称を持っているのだ」
「ややこしい」
「宇宙に合わせた地球言語の再整理が必要かもしれんな。
で、あれば、話を続ける。
ドーナッツの悪魔は最上位生命体。
宇宙の理を作るもの。
寛容の悪魔と不寛容の悪魔は理の名。
宇宙に存在する論理のルールに、悪魔の名を付けて議論しやすくしたものだ」
「……ああ、エビの言っていることに理解が及んできたぞ。
つまり、宇宙の理を悪魔にたとえる文化圏があるのだな。
悪魔が作った宇宙のルール。
宇宙のルールに名を付けて悪魔にしたもの。
その二つがあり、言語の意味として近いから、地球の言葉では同語があてられるのか」
「素晴らしい。メイ、君は日に日に素晴らしく、素敵な知的生命体になっていっているよ」
「いや、これはズルだな。地球に……というよりは日本に似た概念がある」
「で、あるか。それは面白い」
「神だ。悪魔の敵対者だな。
人間は自然災害の理に名を付けて、神にした。
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