ウチの家の壁は薄い
「弟くん弟くん」
「どうした姉さん」
「私たちは今こうして壁越しに話し合ってます」
「そうだけど、今更では? 部屋別れてからずっとこうだったじゃん」
現在時刻は夜の10時、若者的にはまだまだ遊び盛りの時間。
そんな中で、自分”萩尾義信”と、義理の姉”萩尾奈穂”はベッドに座り壁に背を預けて話し合っていた。
ウチの家の壁はなんだか知らないがとても薄い。普通の声量の声で隣の部屋の姉さんと会話ができるほどだ。
しかし、今まで”それほど”困ることはなかったというのに、どうしてそんなことを言うのだろうか?
「……実はお姉ちゃんは、今日告白されました」
「へー、おめでとう。彼氏さんと仲良くな」
「いや、ぶっちゃけ好みじゃなかったから断ったんだけどさ」
「じゃあなんでそんな話を振ったのだし」
「断った後で私が”もし誰かと付き合ったら”って思ったの」
「うん」
「付き合ったら、当然ヤるわけじゃん」
「男女交際ってそういう行為をするためのものだし、当然だよね」
「けど、高校生な私たちはラブホとかはあんまり使えないじゃん、金銭的に」
「だから、”ウチ、今日誰も帰ってこないんだ……”とかのセリフが映えるわけでは?」
「あ、それ分かるかも」
「ああいうの一度は言われてみたい男心です」
「思春期の男子高校生してるねー弟くん」
「それを言うなら姉さんもでしょうが」
そうして話が脇道に逸れたところで、コホンと姉の咳払いが響く。
「まぁ、話を戻すわけだけどさ」
「行為をする場所の話だっけ」
「そう。これ、弟くんも関係のある話なんだからね?」
「はいはい」
「私たちの部屋でヤるとさ、とうぜん声は筒抜けになるわけじゃない」
「本当に今更だけど、そうだね」
「そうなると、私たちの嬌声、つまりエロボイスがお隣に筒抜けになってしまうわけなのだよ!」
「いやなんでエロボイスって言い直した姉よ」
「喘ぎ声でも可」
「まぁ、だいたい分かった」
「分かってくれたか、弟くん」
「けどそういうのは中1くらいに気付いてほしかったかなーと弟さんは思うんだが」
「え、なんで?」
「……オナニーの時、姉さんいつもどうしてる?」
「……いやいやいや、お姉ちゃんはそんなこと家ではしてないし―! 何言ってるのかな弟くんはー!」
「いや、嘘つかなくていいから、お隣の部屋の弟はわかってるから本当に嫌というほど」
「ていうか、中1って言った! 今中1って言った!?」
「うん、言った」
「……もしかしなくても、聞こえてた?」
「うん」
「私の嬌声を!? エロボイスを!? 喘ぎ声を!?」
「そりゃ、こんな薄い壁だし」
その言葉を聞いた姉は、布団をかぶってゴロゴロしながら何かわめいているように聞こえた。
流石にその声の内容は聞き取れなかったが、まぁ「恥ずかしい」とか「死にたい」とかだろう。
そうして5分ほど悶えた後の姉は、ドタドタという足音を鳴らしながら隣の部屋である俺の部屋にやってきたのだった。
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