ウチの姉弟の関係はギリギリだ。
翌日、その日はちょうど創立記念日で休日であった。
姉のバイトも、自分の部活もない、そんな日だ。
それでいて両親は家にいないという、学生にはありがたい日である。
なので、珍しく壁越しではなくリビングで食事をとり向かいあいながら話をすることができる。
「姉さん」
「んー? なにー?」
姉は寝ぼけ半分でいるようで、なんだかぽわぽわしている。
だが、さすがに弟としては問いたださないわけにはいかないのだ。このことを。
「姉さんってさ……」
「うん」
「弟をオナネタにするとか、人として恥ずかしくないの?」
その時、姉は飲んでいた牛乳を噴出した。
「はぁ!? な、何言ってるのかわかんないなー! 何言ってるのかなー弟くんはー!」
「いや、隠さなくていいから」
「隠すって何をかなー!?」
などと言いながら、布巾にてテーブルを拭く姉。その顔は、あからさまに図星を突かれた時の顔だった。
なので、追撃をすることにする。
「昨日、夜、聞こえた」
「私が悪うございました」
そしてあっさりと自分の罪を認める姉。ここからが今回の姉弟会議の始まりだ。
「で、姉よ」
「出来心だったんです。許してください何でもしますから」
「そこまでは求めてねぇよ」
「……じゃあ、お金?」
「お前は弟をそんな屑男に見てたのかコラ」
「だってやるときはやる男じゃん、弟くん」
「それ使い方違うぞオイ」
などと脇道に逸れていると、姉が落ち着きを取り戻したのがわかる。恥ずかしさからまだ顔は赤かったが、それはそれだ。
「……で! 私を辱めて弟くんは何がしたいのかな!?」
「いや、ぶっちゃけ何も」
「……え?」
「いや、単純に姉が人の道に逸れた行いをしてるのなら、それとなく矯正しようとは思ってるけど」
「矯正って、歯並びじゃないんだから」
「ただ、身近だからって弟をネタにするのは姉でもさすがにアウトだと思ったんだよ」
「私を何だと思ってる弟よ」
「弟でオナった変態の姉」
「……言い返せない」
「しらんわ」
「……そんな変態なお姉ちゃんは、嫌い?」
「……家族に好き嫌いってあるのか?」
「一応! 血のつながってない男女ですけど!」
「けど、姉弟じゃん」
「そうなんだけどさぁ……」
なんだか姉は、モヤモヤしたのを吐き出せないでいるようだ。
「まぁ、その辺はいいんだよ」
「え、良いの?」
「姉がブラコンこじらせた変態でも俺にはあんまり関係ないし」
「……ドライ過ぎない?」
「というか、その程度で関わり方を変えるつもりはないって」
「じゃあ何で私の痴態を話題に出した! 言え!」
「だってこれ、笑い話にしないとまずいじゃん」
その言葉に、姉は頭が冷えたようだった。
それもそうだろう。なにせ普通の男女とはいろいろ状況が違う。
俺たちは、姉弟なのだ。血が繋がってなくても。
だから、そんな深い関係にはなれない。だから笑い話にするべきだと俺は考えている。
「……じゃあさ」
「何?」
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