ハーメルン
エンディング後のアニメ世界に来たけど、ヒロインが怖い
村を出る

「……地震?」

 ララベルによって扉に魔法が掛けられ、外に出られず部屋で待機すること約一時間。
 椅子に座ってこれからどうするかを考えていると、部屋が少しだけ揺れていることに気づいた。
 大きくはないが、かなり長い揺れ。俺が地震を感知してから、もう数十秒は揺れ続けている。
 
「ララベル、無事かな……」

 考えるのはララベルのこと。彼女は水を汲んでくるとだけ言っていたが、それにしても時間がかかっている。
 もしかして村人に見つかったのか?
 ララベルのことは知らなくても、額に生える角を誤魔化すことはできないだろう。多分フードか何か被ったりしているとは思うけど、もしバレたら大変だ。
 角だけじゃない。明らかに異常な白さの肌に、深紅の瞳。どれも見られても一発アウトに近い。
 全員が全員ララベルの容姿を知っているとは思えないけど、その異様さは一目でわかるだろう。もしそうなったら、すぐにでもここを離れないと。

 そんなことを考えながら、ララベルに閉ざされた扉の方へと歩いて行った。
 そのドアノブを見つめて、ゆっくりと手にかける。

「扉は……開かないか」

 相変わらずドアは開かない。先ほどと同じでピクリとも動かなかった。
 解除しないってことは問題がないことなのか、それとも解除する暇すらない非常事態ってことなのか。
 嫌な考えばかり想像してしまう。
 モヤモヤとした気持ちが増していき、部屋中をウロウロと歩きながらララベルの帰りを待った。

「……ちょっと遅くないか? やっぱり一緒に行くべきだったんじゃ――」

 不毛な独り言を呟いていると、ふと窓が目に留まる。もしかしたら、ララベルの姿が見えるかもしれない。
 そう思って窓に近づこうとした時、扉の方から岩が崩れるような音が聞こえた。
 反射的に扉を見ると、ドアノブがゆっくりと動き出す。

「コウ、無事だったかい?」

 そして扉が開かれ、ララベルが部屋に入ってきた。パッと見る限りこれといった怪我はしていないように見える。
 だが何だろうか。安堵すると同時に、その様子から少しだけ違和感を感じた。

 何処か焦っているような、心配されていたのはむしろ自分だったような。
 それに浮かないというか、悲しそうな顔をしている。
 何か良からぬことが起きてしまったらしい。故に俺も笑顔にはなり切れず、頭に疑問を持ったまま彼女のもとに駆け寄った。

「おかえり……どうしたんだララベル?」
「……村が、襲撃にあったんだ。目的は私だったようだけど……住民たちが巻き込まれてしまった。君は、あまり見ない方が良いだろうね」
「なッ……!?」

 ララベルの言葉に絶句する。恐れていたことの三倍はマズい状況になっていた。
 村人から密告……いや、だったら村人たちが殺される理由がない。
 もっと穏便に、それこそ村全体を利用して俺たちを油断させることだってあり得た。

 なら王城の連中が独自でララベルを追ってきたのか?
 浮かんでくるのは聖教会という集団のことだ。王国に巣食うその連中は、アニメでもララベルの魔力を辿って居場所を探っていた。
 でも疑問が残る。居場所が分かったとして、いきなり村ごと滅ぼしに来るか?
 あり得ない、せめて一度くらい話し合いに来たっておかしくは……いや、いやいやいや違うだろ! 

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