ハーメルン
NRC第2校医のロマニ・アーキマンは今日も生徒になめられる
NRC第2校医のロマニ・アーキマンは今日も生徒になめられる
ナイトレイブンカレッジには3人の校医がいる。医務室は小さな病院で、全寮制のこの学校には欠かせないものだ。しかしそれ以上に、この学校の生徒が喧嘩っ早く血の気が多く、そしてそれを抜きにしても授業で魔法の事故が同時多発的に起きることがままあるからだ。要はひとりでは足りない、2人だと不安、3人ならまぁ大丈夫だろうということである。実際は3人でも足りない事態はまま発生するし(例:マジフト大会)、そのときは魔法薬学のクルーウェルも混ざって治療をすることはある。
まぁそういうわけで、NRCの校医はクソ忙しい。第1校医はそろそろ定年だし、第3校医(20代女性)は若さと体力に任せて今日も廊下を突っ走っている。さて、真ん中の第2校医はと言えば。
「ロマニー」
エースが机の端に顔を寄せる。
「Dr.ロマンー」
デュースもそれに倣う。
「ロマン先生ー」
ケイトもそれに倣った。
その中で、ポニーテールの青年は皿に切り分けられたそのケーキを高々と掲げた。
「そんな目で見られてもこのマロンタルトは僕のでーす! というか怪我も病気もしてない元気いっぱいの君たちが医務室に居座らないで欲しいな!」
「えーそういうこと仮にも校医が言うー?」
「カウンセリングだって立派なお仕事でしょ、そのマロンタルトまじマジカメ映えしそうだから是非撮らせて欲しいな~」
「カウンセリングは保健室の養護教諭の先生に任せなさい! それより君たちハーツラビュルだよね、ケーキなんて『なんでもない日のパーティー』でいくらでも出て来るだろ。クローバーくんが腕によりをかけて作ってくれるんじゃないのかい」
「ちっちっち、わかってないなロマニ先生は」
指を振りながらエースは立ち上がる。優男のような見てくれで意外に大柄なロマニに比べれば小柄だが、それでも頭の位置は近付いた。エースは言う。
「うちの『なんでもない日のパーティにはマロンタルトは絶対出しちゃ駄目』なんだよ」
「えぇ……ハーツラビュルって変わった規則があるね……」
「他にも火曜日にハンバーグを食べちゃいけないとか、クロッケー大会で2位だった奴は1位の奴にお茶を淹れなきゃいけないとかそういうルールがあんの」
「ちなみにリドルくんは800条以上のそういう規則を全部憶えてるよっ☆」
「最早執念だね…………それはそれとして、それには同情するけどこれは僕のマロンタルトだからね。クソ忙しい仕事のためのエネルギー補給だから」
「けーちけーち! 鬼! 悪魔! 編集者!」
「作家が言う悪口一文字二文字三文字を並べるんじゃないよ。はい散った散った」
「ちぇ~……」
しっしと手で追い払う仕種をするロマニに、渋々とエースとデュースは退散していく。それを見送ったのち、さて、と机にマロンタルトを載せてフォークを立てようとしたところで――ケイトがまだ残っていることに気付いた。彼はにこにこと笑っている。ロマニの知る限り、彼が不機嫌だったことはない。落ち込んでいるふりをしているを見たことはあるが。フォークを片手に嘆息する。
「ダイヤモンドくん……マロンタルトはあげないって言っただろ」
「だから言ったじゃ~ん、マジカメ映えしたいから画像撮らせてって。それだけで用は済むからさ」
「まぁそれならいいけど……――あぁ、そういえば君は辛党だっけ」
「どこから情報が?」
「まぁ校医やってるとあちこちから情報が舞い込んでくるね。はい、撮るならどうぞ」
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