自分本位ブレイド
『虚飾』の魔女、パンドラ。それは、言うなればラスボス候補のうちの一人の名前。
そもそも『虚飾』とは、人間が犯してはならないとされた七つの罪。『憤怒』『怠惰』『傲慢』『強欲』『暴食』『色欲』…『嫉妬』の元となった、『八つの枢要罪』に含まれるものである。いうなれば、番外というやつだ。
容姿、魅了して翻弄する美麗な美貌。16歳ほどの見た目の、完璧に整えられた風貌を持つ白金の髪の女性。
性格、礼儀正しく、誰にでも丁寧に接する、魔女教所属にしては珍しいほどの、人格破綻者。……その正体は自分が全てを台無しにし尽くした後にただの綺麗事だけを並べる、大罪司教にも匹敵する狂人だ。
能力、強力。未だ明らかにはなってはいないが、『自分の好きに事象を書き換える』能力である……はずだ。どれだけ彼女を傷つけても、どれだけ彼女を殺しても、彼女が『何かの見間違いだ』としてしまえば、それで彼女に与えた傷は綺麗さっぱり無かったことになってしまい、『〜なんて元からいなかった』としてしまえば、その相手ごと、引き起こした現象そのものがなかったことになる。まさに反則と呼んで良いほどの力。
曰く、彼女は400年以上昔から生きていた。
曰く、彼女の存在は魔女教の中でも秘匿されている。
曰く、あのレグルス・コルニアスが彼女にだけは敬語を使う。
曰く、三大魔獣の一体、黒蛇を誘導できる。
曰く、エミリアの過去にも関係がある。
曰く、曰く、曰く………
列挙すれば、いっそ立ち向かう気力が削がれるほどの相手。それが今、目の前に立つパンドラという女だった。
ペテルギウスとパンドラは、驚きを混ぜた表情でこちらを見る。尤も、共通しているのは驚きだけで、その他の感情は全く違っている。
「ほぅ………『虚飾』の名を知るとは……アナタは大変勤勉なようデス!その寵愛!その恩愛に報い、怠ることなく自らを磨き続けた!その末に知ったその名!実に良きこと!実に素晴らしきことなのデス!あぁ、あああああああああ!!それに比べて私はなんと、なんと『怠惰』か!脳が、脳が震、震、震えるぅぅぅっ!!」
ペテルギウスが驚愕、自虐のままに頭を掻き毟る。それに目もくれずに、パンドラの目は懐かしいものを見るように僕を射抜いた。
「……『虚飾』とは、随分懐かしい名前で私を呼びましたね。そこの方、ええと、名前は……」
「………レ……ム」
本名を名乗って、『暴食』に名前を喰われてはたまらない。下姉様の名を名乗る。尤も、こちらの名前が本当の名前扱いなのかどうかまではわからないが。
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