ハーメルン
碇シンジはやり直したい
第0話 後悔


「実はそれ、2度目なんだ」

「え!?」

 目の前にいるもう1人のシンジ曰く、彼はサードインパクトが起こった世界から来たと言う。その世界について深い事は言わなかったが、やり直しを望んだのはその時が初めてだったらしい。

 にわかには信じられなかったが、使徒の数や姿等の違い、自分が知らない様々な人間関係で、彼の言うことが本当の事なのかもしれないと思ってしまった。

「じゃあやり直せるの?アスカも綾波も助けられるの!?」

「うん。ただし、全く同じ世界とは限らないよ。僕の時もそうだったしね」

「でもよかった・・・・・・あれ?君がここにいるってことは僕も戻れないの?」

 やり直しを願ったシンジがこの変な場所にいる。ならば自分もそうなってしまうのではないのか。シンジはそう思った。

「それはないと思うよ。理由はわからないけど、僕がここに残れば君は現実に戻れるらしい」

「そうなんだ・・・・・・」

「でもその前に。君に真実を知る覚悟はあるかい?」

 シンジは目の前の自分が発する雰囲気が変わったのに気がついた。

「真実?」

「君のいた世界より僕がいた世界の方が時間は進んでいたんだ。その過程で僕はたくさん泣いたし、怒ったし、壊れた。君の知らない事まで知っている。だから・・・・・・」

「僕に全てを知って欲しいんだね?」

「そう」

 もう1人の自分の目は優しい感じがしたが、死線をくぐり抜けてきたシンジはその目の中に不自然なほどの狂気を見た。
 ただ事ではない。
 そういった事にシンジは敏感だ。だから、なぜ覚悟を問われたのかがなんとなくわかってきた。

「・・・・・・いいよ。話して」

「いいの?混乱するかもよ?」

「大丈夫。僕は変わらなくちゃいけないんだ。全てを受け入れる」

「じゃあ話そう。まず――」

 もう1人の自分が話したのはやはりシンジにとって衝撃的な事だった。
 ゼーレによる人類補完計画。
 それを隠れ蓑にした父ゲンドウの碇ユイとの再会計画。
 初号機の中にいるユイ。
 自分の知らない使徒とその殲滅方法。
 綾波レイは碇ユイとアダムのDNAを使ったクローンの体にリリスの魂を入れた人形であり人でない事。
 アスカの精神崩壊やその最期。
 戦略自衛隊によるNERV職員殺戮とエヴァ量産機による攻撃。
 友人であり使徒であった渚カヲルの死。
 などなど、やはり耐え難き事実であった。

 どんな酷いことを聞かされても大丈夫と覚悟したが、シンジはブルブルと震えてしまった。

「大丈夫?」

「う、うん。そんな事があったなんて・・・・・・」

「でもこれが真実。遅かれ早かれ、君がいた世界もこうなっていたかもね」

「・・・・・・僕は、僕はどうすれば?」

「君は僕がいた世界と再構築された世界の両方を知った。知識はある。それを使えばいいよ」

「わかった」

 シンジは強く頷いた。まだ動揺は収まってなかったが、それよりも全ての障害を排除するという想いが上回る。シンジの心には、ここへ来た時よりも強い意志が芽生えていた。

「そろそろ行きなよ。やり直したいって思えば帰れるよ。あ、気をつけて。敵は使徒だけじゃないよ」

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