第9話 第5の使徒
シンジは覚悟を決めると左腕を曲げて前に突き出して突進した。
鞭が初号機を攻撃する中、シンジはその1本を掴んだ。とてつもない熱さがシンジを襲う。
さらに掴んだ手を離させようと、使徒は腕に鞭を突き刺した。前回腹を突かれたので予想はしていたが、やはり貫通性もある鞭だった。
『シンジ君!』
ミサトの悲鳴が聞こえる。
しかしシンジはこの攻撃を待っていた。
腕を貫通する鞭を力を入れて抜けなくしたため、左腕で2本の鞭を封じてしまえた。
「ぐ・・・・・・!はぁぁっ!」
痛みに耐えながらシンジはナイフをコアに突き刺した。火花が散り、使徒が逃げようと動き回る。ATフィールドは上手く中和しているようだ。
(い、痛い・・・・・・けど!)
シンジは右腕に意識を集中し、思いっきり力を込めて操縦桿を前に出した。するとナイフがコアに刺さり始める。
あと少しといったところでシンジはナイフから手を離して使徒の胴体を掴み、足をナイフに向けて蹴った。
ナイフはコアの中心まで到達。コアは砕け散り使徒は動きを止めた。そしてコアと使徒は破裂し、大量の血を噴き出し初号機とその周囲を赤く染めた。
血の流出が収まると、初号機は出てきたビルまで戻り、格納庫へ帰って行った。アンビリカルケーブルが切れなかったのが幸いだった。でなければ自分で帰還する事はできなかっただろう。
初号機から出てきたシンジは医療施設へ運ばれ検査を受けた。被害は左手と左碗部の火傷だけだった。また、鞭が貫通した左腕が痛むため痛み止めを貰い、念の為1晩入院することとなった。
その頃、ゲンドウと冬月が司令室へ消えた第1発令所では、ミサトとリツコがコーヒーを飲んでいた。
「はぁ・・・・・・」
「ミサト?」
「今考えると遠距離攻撃の作戦は良くなかったなーって」
ため息をつきながらコーヒーを机に置いたミサト。
「ミサトの場合は私恨が邪魔しているのよ。作戦課長がそんな事では困るわ」
「・・・・・・そうねぇ」
「まぁ今回の戦闘で保有している遠距離武器の威力の無さはいいデータになったし。別に悪くはなかったわよ」
「・・・・・・」
ついには黙り込むミサト。オペレーター達も何も言えない。
「うじうじしてないで!次の作戦でも考えなさい!」
「わかったわ。シンジ君に無理はさせらんないもんね。よーし、やるか!」
そう言ってミサトは発令所を出ていった。
一方、司令室でもゲンドウと冬月が今回の戦闘映像を観ながら話し合っていた。
「お前の息子は予想以上に使えるな」
「ああ。今度は次の使徒が来る前にレイに接近させる」
ゲンドウは落ち着いた雰囲気で冬月の声に答える。彼らのシナリオはゼーレの物と同じ路線を走っているが、着実に分岐点に近づきつつあった。
「14年前から運命を仕組まれた子供達・・・・・・か。過酷だな」
冬月はそう言って将棋の本を開いた。
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