第12話 ヤシマ作戦準備
太陽が完全に沈みかけた頃、使徒は未だ地下へ侵攻を続けていた。
一方、ヤシマ作戦の準備は着々と進められている。膨大な資材と人が投入され、作戦本拠地周辺は異様な熱気に包まれていた。金と権力の力は偉大である。
「使徒の先端部、第7装甲板を突破」
シゲルが使徒の状況を報告する。
「なんとか間に合うかしら。こちら前線本部、エネルギーシステムの見通しは?」
軍用車両に設けられた仮設の司令室でミサトが状況を確認する。仮設と言っても、大量のモニターとパソコンが配備され、かなりしっかりとした作りになっている。
『電力系統は、新御殿場変電所と予備2箇所から直接配電させます』
『現在、引き込み用超伝導ケーブルを下二子山に向けて敷設中。変圧システム込みで・・・・・本日22時50分には全線通電の予定です』
NERV本部に残っているオペレーター達の通信が次々と流れ込んでくる。
「狙撃システムの進捗状況は?」
ミサトが確認を続ける。
「組立作業に問題なし。作戦開始時刻までにはなんとかします」
「初号機の状況は?」
ミサトは素早く振り返り、次々と指揮を執っていく。優秀な部下達なので思うように仕事が進むのだ。
「現在狙撃専用のG型装備に換装中。あと2時間で形に出来ます」
「後はパイロットだけね。そろそろ起こさなきゃ」
エヴァンゲリオンのパイロットに割り当てられている休憩室。そこにはシンジが丸くなって寝ていた。
「・・・・・・うっ、よく寝た」
半眠半覚醒のまま腕を伸ばしたり首を曲げたりするシンジ。
「起きた?」
「え!?綾波!?」
突然ベッドの横から声を掛けられた。
そこには2人分のプラグスーツを膝に置いて椅子に座っているレイがいた。
「綾波・・・・・・ずっとここに?」
シンジの寝ていたベッドの横に、ひっそりと座っていたレイは、読んでいた本を静かに閉じると、表情を変えないままシンジの方に目を向けた。
「明日の午前0時より発動されるヤシマ作戦のスケジュールを伝えます。碇、綾波両パイロットは、本日1930に第2ターミナルに集合。2000に初号機及び零号機に付随し移動開始。2005に出発。同30分に二子山第2要塞に到着。以降は別命あるまで待機。明日、日付変更とともに作戦行動開始」
シンジは淡々と話すレイの言葉を聞いた。
おそらくミサトかリツコから聞いた命令をそのまま話しているのだろう。彼女らしくない言葉使いだった。
「食事」と言って、レイは用意されていた食事を指す。食えということか。
「わかった」
そう返事をすると、レイはシンジのプラグスーツをベッド脇の机に置いて出ていってしまった。
現在の時刻は18時過ぎ。シンジはヤシマ作戦の事を考えながら早めの夕食を食べた。
(やっぱりこうなるよね。狙撃は成功させないと)
美味しいとはあまり言えない夕食だったが、シンジはものの十数分で食べ終わり、軽くストレッチをしてから休憩室を出た。
完全に日が落ちた第3新東京市では、使徒がサーチライトの光で照らされていた。
それは巨大なモニュメントのように街の上空に浮かび上がっていた。もしこれが使徒ではなかったら、第3新東京市の観光スポットになっていたかもしれない。
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