ハーメルン
碇シンジはやり直したい
第14話 勝利の余韻




 歓声を上げるNERV職員と第3新東京市市民。
 今回は外へ避難場所を設けていたため、一般人にもよく見えたのだ。

 一方で片膝をつく零号機。そしてそのままかと思いきや、ゆっくりと倒れてしまった。

「綾波!」

 前よりダメージは少ないはずたが、初の実戦というだけあって疲労が生じたのだろう。
 レイも震える手でエントリープラグの排出装置を押し、零号機の外へとエントリープラグを出した。

 ゴトリと地面に転がるエントリープラグ。
 シンジは初号機から降りて零号機の元へ向かった。ミサト達には連絡して救護班を呼ばせてある。

 零号機のエントリープラグの周りには排出されたL.C.Lが溜まっており、地面はぬかるんでいた。ハッチのロックも開けられているが、レイは出てこない。

「綾波?」

 シンジはものすごく熱いハッチを全開にして開け、中を覗き込んだ。

「碇君・・・・・・」

「よかった」

 どうやらレイはハッチのロックを外すのが限界だったようだ。

「本当によかった」

 シンジは自分のせいで第10の使徒への特攻を許してしまった事を思い出し、自然と涙が出た。

「ごめんなさい。こんな時どうすればいいのかわからないわ」

「笑ってよ。生きて戻ってこれたんだからさ」

 困惑するレイに、シンジは手を差し伸べながらそう言った。
 この時レイは自らの中に沸き起こる初めての感情に驚きながらも、優しい笑みを浮かべてシンジの手をとった。

 エントリープラグの外へ出ると救護班が到着しており、ミサトも慌てた様子で駆けつけていた。
 2人はミサトにもみくちゃにされながら病院に運ばれ、翌日までゆっくり疲れを癒した。

 そして2人が寝ている頃、地球の衛星である月で1人の少年が棺桶の中で目を覚まし、上半身を起こす。月面に置かれた9つの棺の内、4つは開かれ少年は5つ目の棺から体を起こしていた。
 その少年の前にゼーレのモノリスが現れる。

「分かっているよ。あちらの少年が目覚めたのだろう?」

 棺から起き上がった少年・渚カヲルは、宙に浮かぶモノリスを見上げる。

「そうだ。死海文書外典は掟の書へと行を移した。契約の時は近い」

 月面に佇むカヲルを見下ろしていたのは、ゼーレの一人、キールのモノリスだった。
 また、カヲルの目の前には巨大な穴が掘られ、仮面をつけた使徒らしき巨人が人為的に寝かされていた。

「また3番目とはね。変わらないな君は。逢える時が楽しみだよ、碇シンジ君」

 カヲルは地球を見上げて不敵な笑みを浮かべた。


 ♢ ♢ ♢ ♢


 日本中の電力を使った決戦から1週間。
 シンジとレイは特別に休暇をもらい、自由に過ごしていた。休暇中、学級委員長のヒカリから連絡があり、次の日に学校へ行くと教室に入った2人を待っていたのはクラッカーの嵐だった。

「「「おめでとー!」」」

「え?」

「シンジ!ようやった!」

 肩をバンバン叩くトウジ。
 なんとこの日はクラス総出で勝利を祝ってくれるらしい。担任も許可しているらしく、いつも真面目なヒカリもこの祝賀会を楽しんでいた。

[9]前話 [1]次 最初 最後 [5]目次 [3]栞
現在:1/4

[6]トップ/[8]マイページ
小説検索/ランキング
利用規約/FAQ/運営情報
取扱説明書/プライバシーポリシー
※下部メニューはPC版へのリンク
携帯アクセス解析