第17話 第7の使徒
「2人でここへ来るのは久しぶりだな」
「うん。3年ぶりかな」
シンジがロシアから帰ってきて数日経過した頃、シンジはゲンドウと母ユイの墓に来ていた。
ここには無数の石碑が立っている。セカンドインパクトや国家間の戦争といった出来事で、遺体が残らなかった人がここに眠っている。あまりにも膨大な死者が出たため、セカンドインパクト以前に作られたような墓はできなくなっていたのだ。
シンジは持ってきた花を墓前に置き、しゃがんで手を合わせた。
「父さんはなんでここに来るの?」
「人には決して忘れてはいけない思い出がある。ユイはそれを私に教えてくれた。だからその事を忘れないために来ている」
シンジから一歩後ろに下がった所でゲンドウは話す。
この時のゲンドウはどこか柔らかな雰囲気があった。普段の彼を知る者が見れば驚くだろう。碇ユイとはそれほど影響のある女性だったのだ。
「母さんの写真とか映像とかはないの?」
「ない。全て処分した。この墓もただの飾りだ」
一応聞いてみたが、やはりユイの記録はないようだ。
「残っているのは記憶の中。今はそれでいい」
そう言うと、ゲンドウはいいタイミングで降りてきたNERVのVTOL輸送機に向かっていく。
「先に戻る」
「父さん!今日は話せてよかったよ!」
「・・・・・・そうか」
前を向いたままのゲンドウの表情はわからなかったが、シンジはこれで良いと思った。
ゲンドウを乗せた輸送機はジェットエンジンで砂埃を上げながら上昇し、NERV本部へと戻って行く。シンジはしばらく輸送機を見送り、豆粒みたいに小さくなった時、背を向けて歩き出した。
少し歩くと、墓地の駐車場にはミサトがルノーに寄りかかって待っていた。
それから2人は車に乗り込み、第3新東京市に向けて出発した。
「どお?お墓参りは」
「色々と母さんに伝える事ができましたよ」
「そう。司令・・・・・・お父さんとは?」
「相変わらずですね。でも少しだけ話せました」
「よかったじゃない」
ミサトはシンジがゲンドウとしっかり向き合えていた事に安堵した。
自分は結局最後まで父親と分かり合えなかったため、無意識に自分とシンジを重ねてしまうのだ。
「きっとお父さんもシンジ君を認めてくれてるわ」
「そうですかねぇ・・・・・・」
「そう――はい葛城」
不意にミサトの服に付いている通信装置から電子音が鳴り、ミサトを呼び出す。
ミサトが返事をした瞬間――
「「うわぁぁぁっ!」」
目の前に駆逐艦の速射砲が丸ごと降ってきた。
突然の事で2人は声を上げて驚いてしまったが、ミサトは高い運転技術を駆使し、ハンドルを切ってなんとか速射砲の残骸を回避した。
「っとと。なんですって!?」
数分前、ちょうどシンジとミサトが墓地を出発した頃、NERV本部では第7の使徒を確認していた。
相模湾沖から侵攻してくる使徒に対し、国連軍に吸収された元海上自衛隊の護衛艦隊(現在の表記は駆逐艦)が攻撃を開始。強力なミサイルは近すぎて撃てないため、速射砲による攻撃が開始された。
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