ハーメルン
碇シンジはやり直したい
第5話 コンフォート17


「よぉーし。じゃあ今夜はパーッとやりましょ!」

「パーッとですか」

 シンジを助手席に乗せたミサトの車は、夕日が照らす道路の上を走っていた。ミサトはシンジを自宅に案内する途中である提案をした。

「そうよん。新しい住人の歓迎会をするからね」

「あ、ありがとうございます」

 どうせ僕が片付けなきゃいけないんだろうなぁ・・・・・・と思いながらシンジは礼を述べた。

「じゃ、コンビニ行こっか」

 ここも前と同じ。自炊をあんまりしないミサトの料理スキルは壊滅的である。なのでミサトは食事は外食、もしくはコンビニで買った物で済ませてしまうのだ。

 近くのコンビニで缶詰やらジュースやらをポンポンかごにぶち込んでいくミサト。シンジが家事担当になるのは決定事項らしい。

 買い物が終わった2人を乗せて走り出す車。
 しかしコンフォート17を知っているシンジは、この車が違う場所へ向かっているのを知っている。その場所は、第3新東京市を見渡せる道路である。

 到着した時には、丁度街の向こうに夕日が沈んでいく時間だった。山の頂上から沈みゆく太陽が街を照らし、鮮やかなオレンジ色に染めていた。
 ミサトはその景色が見渡せる丘の上にシンジを案内した。

「なんだか静かな街ですね」

 シンジは眼の前に広がる景色を眺めて少しだけ切ない気持ちになる。

 あの第10使徒が来た時に壊滅した第3新東京市。全てを破壊し、全てを受け付けない最強の使徒はジオフロントに入るために第3新東京市を吹き飛ばしたのだ。
 だがその時シンジは全てから逃げていた。なんと情けない事か。

「そろそろ時間だわ」

 あまり良くない思い出に浸っていると、腕時計を見ていたミサトが街に目を向ける。すると街中にサイレンが鳴り響き、地面のいたるところから高層ビルが伸びていく。

「ビルが生えてく・・・・・・」

「これが使徒専用迎撃要塞都市、第3新東京市。私たちの街よ。ジオフロントの天井に建物が見えたでしょ?あれが出てきたの」

 ミサトはシンジにこの街に慣れて欲しかった。新しい故郷として少しでも身近に感じてもらおうとこの場所に案内したのだ。
 そしてミサトは選ばれた子供の功績を称えたかった。

「そしてシンジ君が守った街。いいえ、それだけじゃない。あなたは世界を・・・・・・人類を守ったのよ」


 ♢ ♢ ♢ ♢


「シンジ君の荷物はもう届いてると思うわ。実はあたしも先日この街に引っ越して来たばっかなの。さ、入って」

 コンビニの袋を手に持ったミサトは廊下の先にあるリビングへとシンジを案内する。

「あの・・・・・・えー・・・お、お邪魔します」

 シンジはつい「ただいま」と言いそうになった。いきなり他人の家でただいまは言えない。だがコンフォート17はシンジにとって唯一温かかった家。住んでいた時間は短くても、今となっては落ち着くような安心感があった。

「シンジ君?ここは()()()()家よ」

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