ハーメルン
TSレッドは配信者
「おつきみやまとピッピの月」 Part.2

 横穴は広くて、女の子ひとりとポケモン一匹でも背を伸ばして歩けるほど。
 大人が両手を伸ばしたら狭いかもしれないけれど、12歳の子供には関係ない。

「けっこう明るいね?」

「ピッカー」

 地図にのっていない横穴だから〈フラッシュ〉が必要なくらいに暗いと思ったら、天井のロープ伝いにランプがともっている。

 ちろちろとランプの光が山中の壁をなめるように照らして、足元も明るい。
 両手を伸ばして壁につくかつかないかの遊びをしながら探検していく。
 気分は化石発掘の探検隊で、胸を張って頬も赤くして進む。

「ふんふふーん♪」

 ちょっとイイ感じの棒(葉っぱ付き)も拾ってご満悦。
 ロケット団のことはすっかり忘れたのでしょうか、とっても楽しそうですね。

ちゃんと前を見て歩きなさい( ピ カ )

「ご、ごめんなさい……」

 相棒による安全確認が入る。
 ポケモンバトルになると天才的なのに、日常ではなかなか目を離せない手のかかる子だった。


 子育てお疲れ様です
 ピカニキもっと言ってやれ
 転んで涙目のREDちゃん……閃いた!
 ジュンサーさん呼んだ


 電波の入りもそこそこいいようで、配信も途切れることなく続く。
 横穴も途切れることがなく、10分ほど歩いてもなかなか広間や突き当りにたどり着かない。

「……長くない?」

「ピカー」

 ただの一本道がどこまでも続く。
 入り組んでいるわけでもなくて、途中に広間があるわけでもなくて、ただひたすらにまっすぐな道が続く。
 山の中だから風景も変わらないし、歩いているだけで〈こんらん〉しそう。

「分かれ道なんかないもんね」

「ピカピ」

「なんでかなぁ。ただ長いだけかなぁ」

 首をかしげたレッドはそのまま歩く。
 とりあえず先に進まないことにはどうにもできないのだし。

 てくてく。
 てくてく……。
 てくてく…………。

 5分が経った。

「なにもないね」

「ピッカー」

 てくてく。
 てくてく……。
 てくてく…………。

 10分が経った。

「……なにもないね」

「ピカー……」

「20分もまっすぐ歩く横穴なんてあるのかな? しかも地図に書いてないんだよ?」

 レッドがパンフレットやオツキミやま公式サイトのマップを確認する。
 やっぱり横穴のことはどこにも書いてなかった。
 ゲームなら攻略サイトを見るなりするところだけれど、今は配信中だから別の手がある。







「みんなはどう思う?」








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