炎の式
チャクラを使い切ったカカシと負傷を追った再不斬の回復には時間が掛かる。
ゆえに一週間ほどの暫定休戦期間が生じている。数日の誤差はあれおそらく原作とさほど変わらないだろう。
「一週間……薬で無理やり抑える可能性を入れて余裕は五日ってとこか?」
「そんなところかな。お前らもう木登りはできたよな? それなら臨界行と限界行をやろうか」
「何々? 何教えてくれんの!?」
臨界行というのはこれ以上はできない所で限度を超えて出そうとする努力だ。筋肉疲労を溜めて負担を増やし、更なる筋肉を付けようとするのに似ている。限界行というのは自来也が初期にナルトへやらせたチャクラの使い切り修行を思い浮かべれば良い。
「こないだ使った水面歩行の術は木登りの応用だ。自分を浮かせる程度にチャクラを一定量放出しそれの状態を保つ。お前らの実力で言えばそれだけなら簡単だよ」
そう言ってカカシは印を組むと原作の木登り修業の様にヒョコヒョコと水の上へ歩いていく。
「知っての通りオレはチャクラを使い果たして限界だ。ここから自然回復する最低限のチャクラだけで行動できる様に成れば、自然とコントロールが上手くなる。並行作業だってへっちゃらだ」
「スゲー水に浮かびながら分身や変化してるってばよ」
「水分身を水の上で造ったのを見たばかりだろうが。慣れりゃなんだってできるようになるさ」
この作業は省エネと精密コントロールの為の修行。もちろんナルトにとっては九尾のチャクラを理解し易くする為にもなる。カカシにそのつもりはないのだろうが、おそらくこの修行そのものが木の葉の教えの一つなのだろう。
「じゃあまずは俺たちもチャクラを使い切らねえとな。……火遁分身の術!」
「よーし! オレだって影分身しちゃうぞー」
俺が分身二つにチャクラを分け与えたのに対し、ナルトはいつものように無数の陰分身を作り出した。そして次々に水面に移動し、制御しそこなってレミングの行進の如く入水していく。
「……ナルトは多過ぎ。並行作業なら何でも良い」
「サクラは盃で水芸か、器用だな。オレはいつも崖を片手で登るけどね」
何というかサクラは無駄に凝り性だった。水の上にシャンパンタワーを立てて、上からチョロチョロと水を出している。使えることは使えるが俺の火遁ほどの才能はないので、どちらかといえばシャンパンタワー維持のついでなのだろう。
「そろそろ一体減らしても良いかな。封火法印! 駄目か……もう一回!」
「分身を封じても意味はないぞ? 咄嗟に連携取ることが前提だからな。再不斬の分身が厄介だったのは作戦を組み立てられたからだ」
仙人モードから還元する為の影分身を見た時、なんで予め増やしておかないのか不思議に思った事がある。分身を使う時にすべき行動を念頭に入れて分身すると、何をやるかを分身体が覚えている。慣れればナルトがやったように変化を同時に行う事もできるだろう。だが巻物に封印すると、意思疎通ができないので囮にしかならないのだ。
「難易度調整に丁度良い術が他に無いからだよ。まあデコイくらいにはなるさ」
通り一辺倒の事を答えつつ俺はこれから作る新術・火産霊の練習をしておいた。穢土転生を参考に三つ以上の術を一つにまとめる事にしたのだが、その一角に火遁分身を応用する。
呼び出した分身に即座の命令ができないのは知っている。だが、そこに穴というか思わぬ用法というか裏技があるのだ。できれば山中一族から伝心系の技をコピーしたいところだが、無理なら別にハンドサインでも良い。忍刀持って突撃するだけなら別に片手の指示で出来るからな。
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