ハーメルン
成り代わりナルトちゃんリターンズ
秘密が人を惑わす


駅の東口、ロータリーの中央に植えられた桜の木には色とりどりのLEDライトが設置され華やかな光を寒い夜空の下で放っていた。
駅のすぐ近くにある商店街から聞こえるクリスマスソングはベルの音を鳴らしながら容器な歌を垂れ流している。
サンタの格好をした男女があちこちで働きながら自分の店に来るように誘い、通行人は風景の一部と捉えながら各自の目的の為に足を動かす。
新約聖書から現れた神の子の生誕を祝う聖なる夜も精霊信仰と仏教を下地にした無宗教のこの国では年末のお祭り騒ぎの一つでしかない。海外でのこの日の過ごし方と海外のカップル文化と企業の涙ぐましい戦略のお陰でこの日は一定水準以上の家庭なら何時もより豪華な食事とケーキを食べて翌日に現れるプレゼントに胸を躍らせる夜で肉体関係を持った者同士なら性夜を楽しむ、そんなイベントだ。
道を行き交う人々はイベントを楽しむ者かそうで無い者に別れていて、そんな人達が縦横無尽に行き交う駅の東口を出てすぐの所で事件が起きた。
人が刺された。
そのことに多くの人が気づいたのは刺された人の隣に立っていた女性の黒板に爪を立ててひっかいた時のような悲鳴を上げ、注目を集めたからだ。

「おい、人が刺されたぞ!?」
「うそ、逃げなきゃっ」
「押すな! 子供がいるんだぞ!!」
「刺されたとかスクープじゃん」

平和な日本で突如起きた事件に人々はパニックになりその場から逃げようとする人と非日常を一目見ようとする人で混乱が起きた。
そのあいだにも刺された人の腹部からは夥しい量の血液が体外に流れ、悲鳴を上げた女性が自分の手が汚れるのも厭わず刺された場所を圧迫しこれ以上の出血を防ごうとしている。
だが女性の努力も虚しく刺された人は静かに息を引き取り、女性の悲痛な叫びと加害者の狂ったような高笑い、それからサイレンの音と群衆のざわめきだけが聖夜の駅東口に響き渡った。




目を覚ますと、木目調の天井と目が合う。
模様のある何かを人は時に何かしらのデザインと錯覚する時がある。それは目であったり、人の顔だったり、何かしらの記号だったりする。それによって人は時に監視されているといった怪奇現象による精神的不調を訴えたりするがこういう物は総じて思い込みであり、実際はただの視覚的情報を自身の保有している情報と紐づけているだけに過ぎない、らしい。
このことは五番目の彼女がNARUTOを読んでいる横でまるで自分が見つけたといわんばかりに話していたからなんとなく程度で覚えていた。
だがこれが案外使えるのだ、自分しか知らないマーキングで脳内マップで自分の所在地が把握できる。
私は上半身だけを起こし、大きく伸びをして誰に聞かせるかのような声量で起床を告げる。

「うーん、良く寝た!」

ああ、どうでもいい夢だった。
かつての自分が死んだ時の夢など何度も見たいという奇特な人間はいない。いたとしたらソイツはだいぶ錯綜的な性的趣向の人ぐらいだ。私は王道の愛し愛され好きだ。
いつも通りにベッドから降りてこのアパートに引っ越してからほぼ変わらない動きで朝の準備をしているとそろそろ割られても可笑しくない窓の近くに白い鳥がこちらをジッと見つめていた。
最初は新手の窓破壊方法かと疑ったが見覚えのある鳥にまさかと開けると思っていた通りにそれの背中には鳥用のリュックがあった。

「今日の十時に演習場に集合ね」

[9]前話 [1]次 最初 最後 [5]目次 [3]栞
現在:1/4

[6]トップ/[8]マイページ
小説検索/ランキング
利用規約/FAQ/運営情報
取扱説明書/プライバシーポリシー
※下部メニューはPC版へのリンク
携帯アクセス解析