ハーメルン
魔法少女あすみ☆マギカ ~Rainy Ambivalence~
第5話「みんな不幸になっちゃえばいいんだ」(規制版)
『幸せ』なんて、失くして初めて気付くもの。
誰が最初にそう言ったかなど知りもしない。知りもしないけれど──これはきっと事実なのだろう。
『普通』が一番なんて、異端となってから初めて気付くもの。
誰が最初にそう言ったかなど知りもしない。知りもしないけれど──これはきっと真実なのだろう。
これは、あすみが『
幸せ
(
不幸
)
』で『
普通
(
異端
)
』であった頃の話。
これは、わたしが『
不幸
(
幸せ
)
』で『
異端
(
普通
)
』となるまでの話。
◆◇◆◇◆
とある雲一つ無き晴天の空の五月の日。天色に浮かぶ白き太陽の光が、その温もりと共に家族──神名家を抱擁していた。鼻を透かす新緑の木々や草の香る中──。
「もうすぐあすみの誕生日よね」
彩色華やかなフルーツサンドを口にしつつ、頬を緩ませるおかあさん。あすみ──神名あすみの誕生日は
文月
(
七月
)
の一六日。おおよそあと二ヶ月ほどだった。
「そう言えばもうそんな頃だったか──」
空の先まで遠く眺めるように呟く父
「あらもうっ、お父さんったら忘れちゃってたの?」
「──いいや、そんな事は無いさ。時間ってのは一瞬だな──と思ったんだ。にしても……そうか。あすみ、もうそんな歳なんだな。ついこの前まで赤ん坊だった気がするけど」
「あすみ赤ちゃんじゃないもん……!」
あすみはどちらかと言えば背伸びをしたがるきらいがある。周囲の子供たちに比べ大人びたがろうとするとも。だから赤ん坊扱いされるなんて、あすみにとっては恥ずかしく堪ったものではなかった。
「ははっ、ごめんな。私が言いたいのはそうじゃなくてだね──」
「あすみ、ずっと早く大人になっちゃうものだからお父さん驚いてるのよ。ね?」
「まぁ、そんな感じだよ」
「……ほんと……?」
「あぁ」
「あすみ、赤ちゃんじゃないよね……? ほんとに赤ちゃんじゃないよね?」
「もちろん。こんなおっきい赤ちゃんが居てたまるか、と思わないか?」
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