4話
パァン
乾いた音が二人しかいない夜の室内に響き渡った。
一人は女王府国軍大臣兼国軍省統合参謀本部長にして当代の紅焰公アゼル=ル=イグナイト。
一人は帝国宮廷魔導士団特務分室室長にして次期紅焰公リディア=イグナイト。
アゼルにとって嫡子であり、次期後継者のリディアを実の父親がしてはいけない、まるで虫けらを見るような目で見つめていた。
「見損なったぞ、リディア。貴様はあの出来損ないや混じり者と比べて優秀だと思っていたのだが・・・。それはどうやら私の勘違いのようだったな」
「・・・」
アゼルの言葉に何も言わないリディア
「なぜだ?なぜあの混じり者を助けるために禁じ手である”大終炎”を使用した?使用すると魔術師としての寿命が尽きることを分かっておきながらなぜ使用した?まさか腹違いの、混じり者である妹を助けるためだとは言わないよな?」
「・・・妹を助けるために使用しました」
パァン
それを聞いたアゼルはもう一発リディアを叩き、さらに首を締めあげながら続けた
「キサマは馬鹿か!キサマより無能で、庶子の、赤い血の混じった、イグナイト家の万が一としての予備として迎えたアイツを救うために、次期後継者であるキサマは、魔術生命を絶ったというわけか!」
「うっ・・・は、はいっ・・・」
リディアの答えを聞き、呆れ、怒り、侮蔑の感情が入り乱れたアゼルは、リディアを放り投げた。
「今すぐにでもキサマをなぶり殺しにしてやりたいが、あの出来損ないと違い、キサマはすでに知れ渡っている。先日の事件からすぐにキサマが死んだらあらぬ疑いがイグナイト家にかけられるだろう・・・。クソ!こうなったら二人まとめてあの時に死んでくれたらこんな苦労はしないのだかな!いや、そもそもあの予備をキサマが見捨てていればこんな一大事とはならなかったはずだ!」
およそ実の父親が吐く言葉ではないことを話すアゼルに、リディアは何も言わない。
「辺境の修道院にて療養中と話を流す。キサマは追放だ!二度と顔を見せるな、さっさと消えろ!」
「・・・失礼しました」
リディアが去ったあと、アゼルは一人で椅子に座り今後のことについて考え始めた。
「まさか優秀だと思っていたのがあんな大馬鹿者だったとは。予備のアイツに対してはおかしなことを考えさせないようになんとかしないといけんな。そんなことより・・・イグナイト家最大の禁呪を他人に見られてしまったことをなんとかしなければ」
アゼルの手元にある書類には、現場に一番最初に到着し、おそらく大終炎をみたであろう二人の名前が載っていた。
「消すには二人まとめて消すより一人ずつ消した方が時間はかかるが確実だ。まず一人は・・・なるほど。C級軍用魔術の詠唱に3節もかかる無能か。コイツはレザリア方面へ配備させて事故死に見せかけて消すとして・・・もう一人は厄介だな」
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