ハーメルン
デスクリムゾンBLIED~刀~
上杉編~①~

突如、伝令役から伝えられた武田勢の全滅と信玄公の死亡。
そして横溝が青ざめるほどの銃の正体……。

「間違いない。武田を殺ったのは、ガトリングだ……!」
そこにいた信長と松永久秀も横溝の表情に目付きが鋭くなった。

「がとりんぐ。で、あるか…………」
「横溝殿、それは一体どのような銃なのですかな?」
「……硯と紙と筆を用意してくれ。あと信長、城内にいる家臣に大至急集まるように言ってくれ」
「ふむ、分かった」


上杉領。越後・春日山城。
本来なら家臣達が一同に集まるこの場は、今や酒池肉林の地獄絵図と化していた。
「ククク……ひゃーはっはっはっは!!!! オラオラ、もっと腰を動かせぇ! 俺様に奉仕しろ!」
男が侍女を犯していた。侍女がもうこれ以上は体がもちませんと懇願しても、

「そんな甘いこと言ってんじゃねーよ! 孕むまで犯し続けてやるからなぁ!」
と、聞く耳を持たない。

酒をがばがばと飲み、女にもがばがばと飲ませ、ただ腰を振り続ける。

その光景を、家臣一同は歯を食いしばりながら見守っている。

死ぬのは怖くない。だがここで口を出しても男が増長するだけだ。

もはや家内の秩序もあったもんじゃない。

――櫻井隆。上杉家に現れた『渡人』であり、先日、武田軍勢1万5千をたった一人で撃ち殺した男は、毎日、昼夜を問わず女を犯し続けていた。

始めはただの目つきの悪い男としか印象に残っていなかった。その男がある日こう言った。
糞生意気な武田をぶち殺してやる。それが達成できたらおまえら全員俺に従え。

耳を疑うような言葉だった。だが、男が持ち込んだ奇妙な銃が、それを達成してしまった。
武田家は幾度となく戦い続けてきた宿敵であり、ある意味盟友の間柄でもあった。それがあの日、この男の手によって無惨に砕かれてしまった。
信玄公の死亡を伝えられた家臣は、まさか、そんな馬鹿な、と耳を疑った。あれほどまでに強く、あれほどまでに気高い信玄公がこんな外道に殺されてしまうなんて、と。

櫻井の女好きはここに現れた頃からの悪癖であり、もはや春日山城で彼に抱かれていない女性はほぼいない。
抱かれていないのは、醜女だけであった。
フェミニストが怒るぞ。

喰い足りないと思えば、櫻井は城下に赴き、良さげな女を手当たり次第拉致した。連れて行かないでくれと抵抗した男は櫻井に斬られた。
ある男は叫んだ。謙信様は何故こんな男に従っているのだ!? これが越後の龍とまで謳われた男のすることか!? と。
櫻井はそんな男も生意気と判断して斬り殺した。

こうして、春日山城は櫻井というたった一人の渡人のものになってしまった。

「おうおまえら、ちゃんと見とけよ。あーそうだ、確かお前らにも妻や娘がいる奴がいたよなぁ? 今度ここに連れて来い。俺様が可愛がってやるからよぉ!!」
「なっ……!?」
「あー勿論嫌だとは言わせねえよぉ。俺様は無敵なんだからなぁ。クックック……」
「くっ……貴様、もう勘弁ならん! 越後に巣食う毒蛇め!」

一人の家臣が我慢ならぬとばかりに刀を抜いた。

「死ねええええええっ!!」

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