浅井編~②~
現代で言う応接間。その中央に横溝は座布団の上に正座していた。
左右には織田家武将が鎮座している。村井殿の話によると、織田家武将のオールスター、すなわちほぼ全部がいるらしい。
左側には、柴田勝家、明智光秀。
右側には前田利家、佐久間信盛、そして彼を連れて来た村井貞勝。錚々たる顔ぶれである。
(ピリピリしてるねえ。なんか大きな戦いの後なのか、はたまた俺みたいな場違いの人間囲んでどうこうしようとしてるのか、まあなるようになれ、だな)
「殿の、おなーりー」
襖の裏から声がすると、全員が頭を下げる、つられて横溝も頭を下げる。
(これで島崎信長が出てきたりすると笑えるんだがなぁ……)
ゆっくりとした足取りで、一人の武将が入ってきた。
「……全員、顔を上げい」
「はっ……!」
織田信長。
諸説、天下取りのために戦い続けた。誰よりも謀反人を殺した。あらゆる城を焼き払い皆殺しにした。
そしてその眼は、海よりも空よりも深い、地獄の淵の闇を見てきたかのように黒く淀んでいた。
これが人の眼か……! 横溝は内心戦慄し生唾を飲み込んだ。周りの人間はまだ人の眼をしているのに、信長からは生気はあるのに人の眼が宿っていない。
「……そち、名を申せ」
「ああ、横溝 由貴だ。横溝でいい」
「横溝、で、あるか……ふむ……」
「……他になにか?」
「お前を知るために、ひとつ……試したい事がある……」
「……ん?」
「全員で押さえつけろ!」
「なっ!」
信長の命により、左右の武将達が一斉に横溝に飛び掛る! 横溝はたちまち両手足を押さえつけられた状態になった!
「いきなり何すんだ! 離せコラ!」
「この人数ではどうにもならないでしょう。大人しくしなされ!」
実際、横溝は手足の先をジタバタさせるだけであった。
「……」
そこへ信長が日本刀の鞘を抜き、銀色に輝く刃を取り出す。
「信長、正気か!?」
「……正気など、とうに捨て去ったわ」
「この・・・サイコパス野郎!」
「イエアアアアアアア!」
ザンッ!!
横溝の首から上が切り落とされ、宙を舞った。
(なんてこった、まさか出会い頭に首を斬りおとされるとは。俺はこのまま死ぬのか……て、あれ……?)
「い……いっ痛ぇぇえええええぇぇえぇえぇっ!」
首をゴロンと畳に転がせ、血がドバドバと流れ出ているにも関わらず、横溝は死んでなかった。激痛は酷いが。
「やはり、死なぬのか……」
信長は血濡れの日本刀を布で拭きながらポツリ呟いた。
「こら! 信長! 人の首を斬りおとしておきながらその反応はなんだコラ!? 優しい俺でも怒るぞ!」
「……皆の者、離してやれ」
「はっ!」
「いやだから首が……」
「胴体を動かしてみろ」
「へ……、あれ、動く」
大量の血を流したせいでフラフラするが、横溝の体は確かに動いた。
「首を胴体にくっ付けてみろ」
「…………」
言われるままに胴体を動かし、首をくっ付けてみる。そんなことでくっ付く筈が、と思ったら、案外あっさりくっ付いた。激痛は止まらないが。
「体の調子はどうだ?」
「すごく痛かった。というか、信長、ボク、あたまがヘンになっちゃったよぉ……」
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