ななわめ
「まったく、んむ、私の、もぐもぐ、腹の虫は、あむ。こんなんじゃ、もぐもぐ、おさまらないんだから」
「食べながら話すなよ」
「優くんが千歌をこんなにさせてるんだよっ!」
あの後、拗ねた千歌を何とか会話できる程度まで2人でよいしょし、お土産コーナーでお揃いのクラゲストラップを購入。
駅まで移動して今の昼食に至るわけであるが。
「太るぞ」
「うぐっ」
色んなのがあるからとファミレスに来たのはいいものの。
奢りということで千歌は遠慮なく頼み。
「ハンバーグにパスタ、それとピザ。あ、ライスもか。この後にパフェもくるんだよね?」
「僕たちが合流する前には持ってきたお菓子を1人で食べてたらしいね」
「い、いいもんいいもんっ! 優くんに責任取ってもらうんだから!」
「取らないよ」
本来、自分は悪く無いはずなのに何故こんなにも2人は心を抉ってくるのだろう。
と、千歌は半分涙目になり。
目の前にある切り分けたハンバーグをフォークで刺し、口へ放り込むのであった。
「私、見てるだけでちょっとお腹いっぱいになってきたかも」
「食べきれないのなら貰うよ」
「ほんとっ!?」
普段から運動してよく食べている曜でさえ厳しいと思う量である。
当然、千歌が食べきれるはずもなく、曜よりも早く反応していた。
テーブルの上には千歌がそれぞれ半分残したハンバーグ、パスタ、ピザ、ライス。
曜が3分の1程残したうどん。
なんとなくこうなる事が分かっていた優はフライドポテトだけを頼み、それをつまんでいたので頑張れば食べれなくも無い量である。
「それで足りるって言ってたのは、千歌ちゃんが残すの分かってたんだね」
「そりゃ、あんなに食べられるわけがないから」
「あはは……」
「い、いいじゃんいいじゃん! 1回やってみたかったんだもん!」
ぷいっとそっぽを向きながらも、千歌はまだ半分ほど残っていたフライドポテトへと手を伸ばしている。
この後に来るパフェも甘いものは別腹と言って食べきるのは分かりきったことであった。
優はため息を漏らしてポテトの皿を千歌の方へと移動させ、曜から残ったうどんと箸を受け取って食べ進めていく。
「…………うきゅっ」
「ん?」
「曜ちゃん、どうかした?」
「んんっ、な、何でもないない。ちょっとむせちゃって」
喉から絞り出したような声が聞こえ、千歌と優はその音が聞こえてきた方へ目を向けるが。
そこには少し顔を赤くさせながらも大丈夫と口にする曜がいるだけであった。
そう、と2人はあまり気にせずそのまま話に戻り、曜もそれに混ざっているのだが。
視線はチラチラと優へ、それも使っている箸に向いていた。
これまでも一口あーんしてあげたり、飲み物は回し飲みなどしてきたが、ここまでガッツリとしたものはなく。
それに気づいしてしまった曜は急に恥ずかしさがこみ上げてきたのである。
2人が特に違和感を抱いていないため、変な会話はしていないはずだが、その後、曜は何を話していたかまったく覚えていなかった。
☆☆☆
「あーっ、スッキリした!」
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