ハーメルン
【完結】男女比率がおかしい貞操観念逆転アカデミアだけど強く生きよう
第一話 ホロンフローラム
【注意書き】
原作の登場人物のイメージを損なうような印象を受けるかもしれません。
xxxxxxxxx
おれはおかしい。と、彼は理解している。理解して生きてきた。納得とは違うが。
「よーし、じゃあ50メートル走。芦戸と蛙吹からー」
「はーい」
桃色をした肌の女性が元気よく答え、猫背の女性がケロッと返事をする。スタートラインにつき、合図とともに走り出す。軽快にグラウンドを踏み、土が小さく舞った。
春の新しい風が吹き、髪を揺らしていた。心地よい日差しに、汗は柔肌を滑り落ちる。
やがて彼も含めた全員分が終わり、別の種目に移る。
「拳藤さんの握力計でっか! っていうか数値スゴッ!」
彼の視界の端で、『大拳』の個性により巨大な掌をした女性の握力に湧いている同級生たちがいた。彼は思う。果たしてこの学校で正気を保てるのだろうか。
暗示のように、おかしいのはじぶんだと念じる。世間の常識を思い描いた。
オールマイトの肉体の輪郭がはっきりでるコスチュームは性的すぎるとマスコミが世間を煽り、ツイッターではマスキュリストが男性のイラストを性的消費だと騒ぎ立て、ベストジーニストをパロったAV(ベストしーニストとかいうピスもの。想像したくない)が似過ぎていた為に裁判沙汰になり、スマホの広告では普通の女性が青年に迫られてまんざらでもないし、ソシャゲでは女性の偉人や船が美男子化されている。
「次、取蔭ー」
呼ばれた少女が立ち幅跳びのスタートラインに立つ。長くウェーブする黒髪をかき上げ、悪戯に笑ってギザ歯をのぞかせる。『トカゲのしっぽ切り』の個性で両足を切り離して動かし、本体は宙に浮いていた。
「えーそれあり?」
「へへへー、麗日さんだって『無重力』使えばよかったのに」
「いやー、自分に使うと酔っちゃうんだよね」
彼はきゃいきゃいと楽しそうにする彼女たちを極力視界に納めないようにする。決して、あっつ~と言いながら胸元を引っ張りばたばたと服で扇ぐ様を見てはならないのだ。それが普通だ。男性は女性の胸や、ちらと覗くブラなどに性的興奮を覚えない。
ましてや日本屈指の有名ヒーロー養成機関である雄英に在籍する学生が、見知ったばかりの女性に対して性的な目を向けるなどあってはならないのだ。
「みんなすごいねえ、わたし肉体系の個性じゃないから置いてかれてる気分だよ」
そう話しかけたのは葉隠と呼ばれた『透明』の個性持ちだ。透明なのでとうぜん、首元から下着が丸見えだった。汗でしっとりしているだろうブラの内側が、なんだかとても生々しい。彼は心を無にしてなんとか気の無い返事で誤魔化す。
大丈夫、じぶんがおかしいと自覚できている間は大丈夫。心の中で、強く言い聞かせる。
「じゃあ体力測定終了ね。成績や順位は端末に送っといたから、各自得手不得手な分野を理解しておくように」
担任のミッドナイトが体力測定の終了を告げる。長い外ハネの黒髪は毛先まで手入れが届いており、ぴったりとしたヒーローコスチュームは悩ましいボディラインを強調している。
そんな担任の言葉に、「あの」と挙手をする女生徒が一人。
「なに? 八百万」
「克服ではなく、理解するだけでよろしいのでしょうか」
[1]次
最初
最後
[5]目次
[3]栞
現在:1/8
[6]トップ
/
[8]マイページ
小説検索
/
ランキング
利用規約
/
FAQ
/
運営情報
取扱説明書
/
プライバシーポリシー
※下部メニューはPC版へのリンク