ハーメルン
【完結】男女比率がおかしい貞操観念逆転アカデミアだけど強く生きよう
第二話 デンシベンセ
「じゃ授業始めるわよー」
いつもの調子でミッドナイトは教壇に立って生徒を見下ろす。どいつもこいつも、どこか物足りなさを覚えている顔をしていた。
それを感じ取り、小さく笑って言った。
「今日はお待ちかねの戦闘訓練よッ!」
ミッドナイトの一声に、おぉ~と教室が沸いた。
体力測定以来 一般教養に加えて個性関連の法律の授業が続き、これといってヒーロー科特有の個性を使った授業は無かったからだ。欲求不満であることが手に取るようにわかる。
また、今回の実戦形式に合わせてヒーローコスチュームも支給された。アタッシュケースが配られ、各々が胸を躍らせる。
「いい? 現場のプロヒーローは大小様々なアイテムを使ってるけど、誰もが一番最初に手にするのがそれ! この三年の間に使って使って、使いつぶして、ボロボロにぶっ壊して、改良を重ねて自分のトレードマークに出来るくらい使い込むのよ!」
生徒たちに与えられたものは画一的な戦闘服ではなく、あらかじめ学生からデザインや個性を使う際の機能の希望を募った上で企業が製作したものだ。
市場には出回っていないような素材が使われており、防刃防弾防炎その他諸々の性能が詰め込まれたワンオフアイテムとも言える。
いまはまだ卵だが、ヒーローコスチュームを手に入れるという事は、間違いなくヒーローとしての一歩を踏み出した証なのだ。
ヒーローの根源ともいえるアイテムに、彼女らは胸の内にある強い意志を燃やす。必ずヒーローになるという。
「じゃあ着替えてから、ん~どこにしよっかな……じゃあ、訓練グラウンド・エコーに集合! わたしは先に行ってるから……そうねえ、今から十分以内ね」
「えっ!? あの……時間短くないですか?」
と麗日が戸惑う。そもそもまだ新学期は始まったばかりで、訓練グラウンド・エコーとやらの場所も知らされていない。
「迅速に現場に駆け付けるのもヒーローとして必要な事よ? もう授業は始まってるんだから、これも訓練の内!」
発破をかけるように手を叩くと、まず彼がアタッシュケースを引っ掴んで窓から飛び降りる。続いてハッとした拳藤が教室のドアに駆け出した。1-Aしか使っていないヒーロー科 第一学年の棟の廊下は、もちろん人気が無くガランとしていている。リノリウムの床が窓から射す春の陽を柔らかく照らし返していた。全速力で走り、更衣室に向かう。
その道中で彼女は自責した。舐めていた。ヒーローらしい授業に浮ついていた。ミッドナイト先生の言う事は一部の隙も無い正論だ。着替える時間が無いから? 事件の発生場所がわから無いから? だからヒーローの到着が遅れたなどという言い訳は、プロになってからは通用しない。
急に飛び降りた彼にぎょっとしたクラスメートが窓の外を確認すると、何事も無く走っていた。安堵するが、気持ちを切り替える。個性で落下ダメージを受けない者は飛び降りてショートカットし、残りは拳藤を追う。
八百万が生徒手帳を確認すると訓練グラウンド・エコーは走って七分ほどだ。幸いにも第二更衣室を経由すればギリギリ間に合う。(遠い場所の訓練施設自体に更衣室は無い。広大な雄英の敷地で忘れ物したら取りに行くの大変だから)だがそれは着替える時間を考慮しない場合の話だ。多くの生徒はここで躓くだろう。
イジワル。とボブカットの少女、小大 唯はトップギアで走っているにもかかわらず、その物静かな表情を崩すことなく現状を分析する。
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