思うところ
駆逐艦朝潮
「……」
私がまず見たものは、妹である大潮が、未だ目を覚まさない司令官に馬乗りになり包丁を向けている姿だった
不思議とそれを止めようとは思わない、むしろ早くやれと、ずっと思っている
「…なんで止めないの…」
「止める理由がありませんから」
ああ、こいつは止めて欲しかったのか…
「……」
「なんですか、やめるんですか?」
「……なんで、そんなこと言いながら泣いてるの?」
「……え?」
手で目元を拭うと、確かに濡れていた
なんで?なんで私は、憎い相手が殺されかけて泣いている?
なんで私は、こんなにも司令官が憎い?
なんで、なんでなの…?
「…ぁ……」
そこで意識を手放した
黒いモヤがかかっている
頭がぼうっとして、何も考えられない
ただ、声が聞こえた
憎めと、殺してしまえと
なんでそんなことを言われるのかもわからないのに
目の前に現れた司令官に、砲を向け、私は放った
血と肉塊、それだけの、何かが砕け散った
痛い…痛い…
胸がな張り裂けそうなほど痛い
死にそうなほど辛い、なんで?なんでこんなに憎いのに…
なんでこんなに憎いの?なんでなの?
私は司令官を…殺したいの?
確かに強い憎しみがある、殺意も抱いているけど
それはなんでなのか、まるでわからない
「…?あぁ…ここは…」
いつぞやの部屋か、このモニターと、背後の司令官
何も変わらない…いや、違う、一つだけ違いがあるなら…
「…誰?」
モニターの中に、誰かがいたこと、そしてこっちを睨みつけている
誰なんだろう、この子は…
いや、誰かは知ってる
鼓動が速くなる
「なんで、なんで私がそこにいるの…?」
「…あれ?」
「よお、起きたか」
「…提督、ここは?」
「離島鎮守府だ、お前が目を覚まさないから帰るのを遅らせた」
「…演習は終わったんですね」
「ああ、バケモン1人に全部覆されたよ、ヤベー奴がいやがる」
「…なるほど、あの、ところで…」
「大潮か?お前が倒れたって知らせに来てくれた」
「…それだけですか?」
「ん?他になんかあったのか?」
「……いえ、なんでもありません、お礼を言ってきます」
「また、まだ動くな、帰るのは明日だ、明日になってからでも十分だろ」
「………そうですか」
提督 三崎亮
「んじゃ、また後でくるわ」
やけに何かを気にした様子が気になる
こいつは元々閉鎖的でここに強い思い入れがあることは知っている
俺の読みだと二択なんだが、まあ多分こっちだろ
「よぉ、色男」
まさか本当に意識不明だとは思わなかったが
現実としてそうなっている以上はそう言うことだろう
「ふーん…原因不明か、案外ネトゲしてたら、なんてオチかもな…せっかくだしログでも見せてもらうか」
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