ハーメルン
奴隷転生~異世界に転生♂したら、美少女♀と間違えられ男の娘として生きています~
12話 A級錬金術師 13話 銀貨の価値 前編
怠惰
七つの大罪の一つだ。
この大罪を背負った人間が、私の目の前にいた。
時刻は昼下がり、我がご主人様は週に1日働き、週に4日はこうしてベッドの上で、ゴロゴロ過ごしている。
「ご主人様、昼食に出かける時間ですよ」
しかし、奴隷たる私にそれを口出しする権利はない。
私の仕事は店番と、昼下がりの目覚まし時計なのだから。
「…お腹空いた…」
「おはようございます」
気怠そうに起き上がるご主人様。
「そういえば先日、常連の騎士様にA級錬金術師の価値を教えていただきました」
曰く、錬金術師は魔術師が鍛錬した後に、開ける道であると。
熟練の魔術師が王都の施設を使い、才能あるものだけが習得できるようだ。
ランクは、C級からA級。
店を開く際は、王国から発行された証明書を、客の見える場所に掲げなくてはいけない。
この店は、入り口の扉をくぐった頭上に貼ってあった。
見える場所だが、見せる気ないだろう、と。
ほとんどは、魔術師を引退したC級錬金術師が店を開くのが一般的で、市場保護の為、ランクによりポーションの最低価格が決まってる。
C級 銅貨10枚〜
B級 銅貨50枚〜
A級 銀貨2〜
効果もランクにより差があり、
ポーション 通称 赤ポーション
C級 軽傷回復まで
B級 重傷回復まで
A級 即時使用なら欠損回復まで
マジックポーション 通称 青ポーション
こちらは、ランクにより魔力回復量が違う
最低価格で、欠損回復ポーションを販売しているこの店を、ありがたくなるわけだ。
「よく勉強しているわね、それで?」
気怠そうな雰囲気から、少し怒気を含んで流暢に聞かれる。
…それで?
俺の危機感が、ここは答えを間違うなと警鐘する。
「A級錬金術師の証明書を透明竹で挟み保護し、店先に掲げれば、客数は何倍にもなると思案しましたが…」
ご主人様の顔色を伺う、殺気が漏れているのを感じる。
「ご主人様は、静かな暮らしを望んでいると思いますので、特に何もする事はございません。私の給料が増えるわけでもありませんしね」
最後にジョークを効かせて、笑顔で答える。
奴隷の衣食住は主人の義務だが、給料はもちろん無給だ。
「…そうね…」
俺の答えに満足したのか、また気怠そうに答えた。
「…給料…」
そして、何か思い出したのか、そう言って1枚の硬貨を渡してきた。
13話 銀貨の価値 前編
交易都市クーヨン
商店街を行き交う人々は、一人の少女とすれ違う度に注目していた。
ゴシック調のメイド服が、よく似合う美少女だったからだ。
そして、右手と首筋には奴隷の証が刻まれている。
どこの貴族様の召使いなのだろうかと、注目されるのだ。
そんな視線を感じつつ、私は上機嫌だった。
ご主人様が、銀貨1枚を小遣いとしてくれ、今日は店を閉めるから街に出ると良いと、言ってくれたのだ。
束の間の自由と財産を得た私は、何に使おうか思案しながら、商店街を散策する。
「おばちゃん、腰袋あるかな?銅貨を入れる用の」
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