第10話 黒騎士と鉄の処女
「『皆さんどうもこんにちは、ムニエルです。Dr.ロマンに代わって、オペレーターを務めさせていただきます。一応カメラ回しておきますね』」
「『おっと、私を忘れてもらっちゃあ困るなあムニエルくん。美少女サーヴァントたちを録画しようたってそうはいかないぜ?』」
「『グエーッ! 貴様はダ・ヴィンチちゃん!! この録画はカルデアの記録、いや人類史の宝として……ギャアアア!!』」
「あの、初っ端からふざけるのやめてもらっていいですか。どういう状況か分かりづらいです」
マシュの冷静なツッコミが、カルデアの管制室に向けられる。
ノアたちが西の砦にて、ヴラド三世と飛竜を退けた時から遡り。彼らと分かれたもうひとつのチームは、北にて竜の魔女への抵抗を続けているという砦を目指していた。
こちらは立香、マシュ、ジャンヌ、マルタ、マリーの五人。もう一方のチームとは比べ物にならない華やかさに溢れている。比較対象のレベルが低すぎるというのもあるが。
ロマンがノアたちのオペレーターに回ったことで、ムニエルとダ・ヴィンチが立香たちを補佐することになった。機器による通信という概念がないジャンヌたちの目には、それは奇異なものとして映っただろう。
マルタは空中に投射された映像を興味深そうに眺める。
「へえー、こんな便利なものが発明されたのね。ラザロが病気になった時も、これがあればもっと早くあの人も来てくれたんでしょうけど」
「ヨハネによる福音書第11章ですね。私も神の声だけでなく、この通信のように姿も見せてくれたらいいのにと思います」
「そうそう、少し抜けてるところがあるのよね、あの人たち」
何とも立ち入りづらい話をする聖女コンビ。ヨハネの福音書第11章は、マルタの弟であるラザロが病死し、洞窟に葬られたところ、駆け付けてきた神の子が彼を復活させるという話である。
現代ではあくまで伝説として受け止められているが、マルタの口振りから察するに、どうやら現実に起こったことらしい。立香以外の話を聞いていた者は全員、度肝を抜かれる気分だった。
立香は首を傾げてマシュに問う。
「なんでみんな驚いてるの?」
「伝説だと思われていた出来事が本当だった……簡単に言えばツチノコやチュパカブラが発見されたようなものです」
「なるほど! つまり救世主はUMAだった……?」
「どんな思考回路をしたらそうなるんですか!?」
いかにも陰謀論者が沸き立ちそうなトンデモ解釈を言い放った立香に、マシュは更なる驚きに見舞われる。
とは言っても、Eチームの片割れが別の場所にいることで、いつもの騒々しさはない。それだけでマシュの心労はいくらか軽減されていた。
すると、マリーがぴょんぴょんと跳ねながら手を挙げる。
「はい、はい! ジャンヌさんに質問してもいいかしら!」
「い、一体なんでしょう」
「ジャンヌさんの頭のそれ、どうやって付けているの?」
「………………」
言われて、ジャンヌは固まった。
マリーの疑問は確かに理解できるものだった。彼女が頭に付けているサークレットと思しき装飾品。それは紐などで固定しているわけでもないため、一見してどう付けているのか分からない。
しかし、当の本人が答えづらそうにしているのは何故なのか。不審に思った立香は、顎に手を当てながら考察する。
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