03フェイト執務官の後輩 Q
「やあ、トラブルかい?フリント」
「あ?…なんだ…弁護士先生か」
左右を局員に固められた体格のいい若い男、フリント・ミシガンは、ファンに声を掛けられると不愉快そうに顔を歪め言った。
「俺は何もやってねぇんだ。弁護士に用はねぇ」
「それなら、なおのこと。困った管理局員ってのもいっぱいいるしね」
ファンとフリントの関係はシンプルだ。
フリントは学生時代悪い付き合いが多く、暴力沙汰や窃盗を繰り返していた。とうとう、少年院に放り込まれそうになったところで、彼の母親がファンに泣きついた。ファンの尽力のお陰で、フリントは保護観察処分に留まり、以降、フリントの母親ジャクリーン・ミシガンは、ファンに何かと相談を持ち込むようになった。母親とファンの熱心な姿に、フリントは悪い縁をきり、最近ではラーメン屋の下働きをするまでに更正した。
ファンがチラリと局員たちを見る。局員達は露骨に厄介者を見る目でファンを見ていた。気にせずファンは続けた。
「今なら無料相談の範疇ですむかもだ。お母さん、今入院中だろ」
「…」
フリントは顔をしかめたが、無言で頷いた。ファンは相談依頼と受け取り、局員達に向き直る。
「では、状況を説明していただけますか?公正さに不安があるのなら、そこに本局執務官殿も居らっしゃるしね」
ファンはエリオとキャロを席に残し、近寄ってきたフェイトとティアナを指して言った。
店の客たちから見えない位置に場所を変え、身分の証明をしたフェイト達が二人の局員に状況を聞く。説明してくれたのは、ネブラスカ・リンカーンと名乗る壮年の男性警邏隊員だ。彼の傍らにいる女性隊員チュマシュ・サウザンドオークスは、ティアナと同じ位の年頃で新品の制服姿を強張らせ、フリントを警戒している。男の中でもフリントはかなり体格がいいので、気後れすまいと必死のようだ。
事件のあらましは、ここから少し離れた混在住宅地の共同住宅の一室に住居侵入があった。と、いう通報からだ。現場に着いたネブラスカと、チュマシュが室内を捜索した。すでに犯人は立ち去った後だった。が、部屋の中はひどく荒らされていた。
部屋の住民の小柄な初老の女性、エリー・ペンシルベニアに犯行の時間帯を確認したところ、彼女が日課にしている1時間の近くの公園への散歩を行い帰宅後、玄関に入ったところで、すぐに部屋が荒らされていたことに気が付き通報した。とのことだった。
残念ながら、エリーの住む共同住宅には、監視カメラがなく。周辺住民に聞き込みをしても、怪しげな物音を聞いたという証言はなかった。
「最近引っ越してきたばかりの私の為に、厄介ごとに巻き込まれたくないのさ」
エリーは毒づいた後、自身は公園からの帰り道に大柄の怪しい男を見た。と証言した。その男の特徴がフリントと一致。
また、近くのコンビニエンスストアで、同じ特徴を持つ男性の姿が最近現れるようになった。その男はこのラーメン店で働いている。と、コンビニ店員からの証言も得られたため。
エリーに顔を確認させたところ、「私の見た男で間違いない」とのこと。その後、任意同行を求めていた所に、ファンが現れたとのことだった。
「フリント、その辺に行った覚えはあるかい?」
「ああ、あの公園近くの駐車場に車を置いている。コンビニには仕事前に飯を買いに行くこともある」
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