脱出
ボン、という音がしたとともに足が地面についたことが分かると、士堂は恐る恐る目を開けた。目の前にパーシーがいることを確認すると思わず息を吐いてしまう。
「初めての煙突飛行はどうかな? マグルではこう言った移動はないそうだからね。でも君は姿現しを経験しているんじゃなかったか?」
「いや、あれとはちょっと違うかな。 あっちは手をつないでいる分安心感があったけどこっちは、初めてってこともあって不安だったよ。」
煤を払いながら荷物を床に下ろすと、士堂はウィーズリー家の中に目を通す。ダイアゴン横丁で見たような魔法道具がおいてあり、時刻ではなく行動を示す時計に動く写真が表紙の本。ひとりでに掃除する箒に火花を散らすラジオ。初めて見る魔法使いの家はホグワーツほどではなくても、やはり刺激的ではあった。
パーシーに促されて手を洗っていると階段から騒々しい音とともに、フレッド&ジョージとロンが下りてくる。その後ろから赤毛の少女が遅れておずおずと顔をのぞかせる。ちょっと会わないだけで彼らのエネルギーに驚いてしまう。双子が両手に怪しい紙筒を持っていることから目をそらしながら、友人と再会を喜び合う。
「ああ、元気だった士堂! 僕が行こうとしたんだけどママから家の片づけをしろって言われちゃってさ。今も兄貴たちと一緒にやってる最中。」
「おお、愛しの士堂。君を今日まで恋焦がれていたんだ。早く堅物野郎が君を連れてこないかと、今か今かとね!」
「我らが発明した自動追尾花火Ⅳの運用テストには、君が一番なのは知っているだろう?
さあ、着替えて外に出ようではないか!」
「あ、私はロンの妹のジニー。みんなから話を聞いていたんだけど今度おしゃべりしましょう!」
「ロンも元気そうだなあ。初めまして、ジニー。僕でよかったらいつでもどうぞ。」
双子の恐ろしい歓迎を無視してロンとハグをしてジニーと簡単な自己紹介をしていると、庭からウィーズリー夫人が戻ってきた。士堂の姿を見つけたウィーズリー夫人が目を麗しながら、ハグをしてくる。
「ようこそわが隠れ穴に。元気そうで何よりですわ。駅で見た時よりも引き締まっているのはさすがですこと。」
「お世話になります、ウィーズリー夫人。これは祖父母からのお土産です。祖父母の生まれ故郷日本の伝統的なお菓子の詰め合わせと聞いています。」
「モリーでいいわよ、堅苦しいのは嫌ですの。まあまあ、気を使ってもらって。これはマグルのお菓子ですわね。今日はアーサーは帰らないとのことでしたが、彼が喜ぶことでしょう。」
荷物の中からお土産を渡した士堂はそこでロンになんとなしに尋ねてみた。
「ハリーはまだ来ないのか?」
その夜、ロンの部屋で身を寄せ合ってベッドに横になる士堂とロン。夜が深くなり、聞いたこともない動物の声が聞こえる中で意識を闇に落としていた士堂は、ベッド付近に人の気配を感じる。目をぼんやりと開けると双子が着替えて口元に指をあてている。静かにというジェスチャーに気づくと、ロンがばっと起き上がった。慌てて双子がロンに強く警告すると、ロンもゆっくりベッドを下りながら肩をすくめる。
「何してるんだ?」
士堂の疑問にフレッドがやけに真剣気味に顔を近づける。他の二人にしても緊張感が漂う雰囲気に自然士堂も身構える。右手に杖を手繰り寄せ、隠していた黒鍵に手を伸ばそうとすると、ジョージが必要ないとばかりに手で静止してくる。
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