紅魔
葦名流皆伝の祝いから一週間。
一心は冥界で紫からの客を待っていた。
時折妖夢の鍛練にもふらりと現れ、彼女に稽古をつけることもある。
しかしその稽古中でも、どこか上の空だった。
時折幽々子と酒を酌み交わす時もあり、妖夢も無理矢理参加させられた事もある。
こんな平和な日々も悪くないと、一心は思いつつあった。
しかしどれだけ酔おうと、どれだけ笑顔になろうと、必ず心の奥底には強さを求める何かがいた。
より強く、もっと強く
そう語りかける自分がいる。
そしてその日がやって来た。
その日一心は朝食を終えて妖夢の稽古を見ていた。
すると急に目を見開き、刀を持って立ち上がる。
「...来たか」
「?どうしたんですか?」
「客が来た。八雲のな」
「ああ、紫様が宴会で言ってた...」
「そうじゃ...退屈しない相手らしいな。カカカッ!楽しみじゃ!」
一心はすぐに玄関へと向かう。
妖夢も一時鍛練を中断し、彼へついていく。
「たのもー!来てやったわよ!」
白玉楼の門からは、一人の幼い声が向こうから聞こえていた。
一心は玄関へたどり着き、妖夢は急いで門へと向かう。
「えーっと...何方でしょうか」
「そっちが呼んどいてどなたはないでしょ!」
「紫様から聞いたのでしょうか」
「そうよ!ここにすんごい強い奴がいるって聞いたのよ!会わせなさい!」
「い、今開けます」
門を開くとそこには青髪で真紅の瞳を持ち、背中には蝙蝠の羽を生やした小さな女の子がいた。そして後ろにはメイドの格好をした銀髪の女性がいる。
「やっと開けたわね!」
「あ、レミリアさんでしたか。それに咲夜さんも」
「久しぶりね妖夢」
「あ、外じゃ何なのでどうぞなか...」
レミリアは妖夢が言い終わる前に、ズカズカと彼女を無視して門をくぐる。
「んで、私達に挑みたい奴は何処にいるの?まさか半々のあんたじゃないでしょうね」
「は、半々って私の事ですか」
「何よ間違ってる?」
「い、いや」
「じゃあいいじゃない...それよりも」
レミリアは屋敷の玄関を睨む。
すると屋敷から、一心が現れる。
「なんじゃ...お主魂魄よりも幼いではないか」
「む、あんたが紫が言ってた葦名一心ね。いきなり私を子供扱いとはいい度胸じゃない」
「カカカッ...これは失礼した」
「それにしても痩せてるわね。ほんとに強いの?」
「さぁてな」
「!」
レミリアは一瞬一心を見て何かに気づくと、彼を指差し宣言した。
「決めたわ。まず私が相手になってあげる」
「ほぉ、お主がか」
「そうよ...あと聞きたかったのだけど。紫の言うとおり弾幕ごっこじゃなく真剣勝負をご所望なのは本当なの?」
「弾幕ごっことやらは知らぬが...真剣での勝負を望むのは確かじゃ」
「ふーん」
レミリアは一心の腰にある刀を見る。
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