死屍累々─Walking close to each other
二時間後、諸々の準備を整え、おれたちは集合場所の廃屋までやってきた。ここはおれが前に使っていた隠れ家で、長いこと放置はされていたがそれなりには使える場所だ。
おれたちのほうが先に着いたらしく、しばらく適当に話して時間をつぶす。
「……で、そのモローってどんな奴なの?話を聞いた感じだと、ただの女好きにしか聞こえないんだけど」
「……まあその通りだな」
「何でそんな奴呼ぶのよ……」
「まあ、お前の言ってたとおり盾にはなるから……」
と、そんな会話をしていたまさにその時だった。噂をすればというやつだろうか、モローがやってきた。
軽く右手を挙げて挨拶する。それに対する奴の第一声は、まあ実に奴らしいものだった。
「おいW!誰だその女は!?」
「……今回の協力者だ」
「お前……どこでそんな可愛い子と知り合ったんだよ……さてはお前の女か!?」
「……あんな感じの奴だけど、あんま気にしないでくれ」
「……ま、使えればそれでいいわ」
「うおっ……!ゴミを見るかのような視線……たまらないぜ!」
「……あれほんとに使えんの?」
「……それだけは保証する。……それだけだけど」
結局、モローも入れた三人で行くことにした。人数は多い方がいいし、どちらかと言えば後衛よりの戦い方のおれたちに対して、前衛タイプのモローがいると相当やりやすくなる。
呼び出すのは簡単だった。
「……何の用だよ、W。俺は今むちゃくちゃ機嫌が悪いんだ。大した用もねえんだったら切るぞ」
「……拉致監禁暴行をはたらく外道集団を皆殺しにするんだが、来るか?」
「行く行く!待ってろ、俺のカワイ子ちゃんたち!」
「すまん。勢いで通信切ったけど、集合場所はどこだ?」
とまあこんな具合だ。二つ返事でやって来た。簡単すぎて耳を疑ったほどだ。
「しかし、お前もよく来るよ。碌に詳細も聞かないで」
「……ま、俺もあたりはつけてたからな。だが居場所がわからなかった」
「……ああ、それであんな機嫌が悪かったのか」
「まあな。で、お前は何か知ってる口ぶりだったし、乗っかってみたってわけだ」
モローは馬鹿だが、馬鹿ではない。奇妙な表現だが、そうとしか言いようのない男だ。
今回も、詳細をきちんと話せば来てくれるという確信はあったが、そこまで自力でたどり着き、その上で即答してくるとは。やる男だとは知っていたが、それでも驚きだ。
こいつを誘ったのは、何もその場のノリやその類ではない。こういう鋭いところがあって、戦闘で頼りになるからだ。
それに、打算もある。あいつを連れていくのは百歩譲っていいとしても、また死なれるなんてことはあってはならない。
人はそう簡単に生き返ったりできるものではないということは、これまで生きてきて嫌というほど思い知らされてきた。今回は巻き戻ったが、この現象の原理も何もかもがわからない以上、こんなものに頼るのは危険だ。どうせ巻き戻る、そんな気持ちで軽率に動いて、もしもう戻らなかったら。
……その時は、おれは悔やんでも悔やみきれない。
何より、あいつをそんなタイムマシンみたいに使うのはおれが許せなかった。
モローは見ての通りの男だ。もしおれに何かがあっても、モローなら死んでもあいつを守ってくれる。
その程度には、おれはあの男を信用していた。
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