ハーメルン
ジョセフとシーザー 鞠莉に恋をする
第二部 第十四話 心に決めた王子様

水の都、ヴェネツィア
潮風に揺られながら、
小原鞠莉は、ジョセフとシーザーを連れて、
旅行をしていた。

「んで、どこに行くんだい?マリー?」

「そうね、早速だけど、観光するわよ!
時間は、待ってくれないわ!」

鞠莉は、活気に、そう言うと、
軽やかな足取りで、歩き始めた。

シーザーとジョセフも、続いて歩くのだった。

ジェラードを食べて、ヴァポレットやゴンドラに乗船し、
美しい景色を見渡すのだった。

三人は、次々と名所を巡り、ヴェネツィアを
全身で満喫するのだった。

日が傾き、街が黄昏に包まれる頃、
三人は、サン・マルコ寺院に到着した。

寺院の内部には、至る所に、
モザイク画が施されている。

眩いほどの光が、寺院を照らしていた。

「わぁ…綺麗…」

鞠莉が、呟いた。

「見事だな」

「すっげーなぁ、たくさんの人が、
これを作っただなんて、信じられねーな…」

三人で暫く、天井を見上げていたが、
不意に、シーザーが鞠莉に問いかけた。

「なぁ、マリー」

「なぁに、シーザー?」

「俺は、マリーのことが…」

その瞬間、ジョセフの身が乗り出し、
シーザーに口出しした。

「おいおい!シーザー!
お前、やらしいことを考えているんじぇねーだろうな!?」

「何、邪魔するんだ!このスカタン!
今、俺が話していただろうが!」

「そういうの、抜け駆けって、言うんだぜ!
俺より、先に言わせるか!」

二人は口論状態になった、
鞠莉は、二人の間を冷静に入った。

「ちょっと!二人とも!
落ち着きなさい!マリーの前で、ケンカはやめなさい!」

鞠莉の透き通った声が、二人の鼓膜を揺らすと、
二人はピタリと静止した。

鞠莉が、一安心した表情を二人に見せて、
シーザーがぽつりと呟いた。

「交互に想いを伝えれば、いいじゃねぇか?」

「そうだな、仕方ねぇ、シーザーの意見に同意してやる!」

ジョセフとシーザーは、鞠莉を、
じっと、見つめた。

鞠莉は、大きな瞳で、こちらを見ていた。

先に口を開いたのは、シーザーだった。

「マリー、俺はマリーのことが好きだ、
この世の何よりも、キミを愛しているよ、マリー」

「シーザー…」

後から、ジョセフが口を開く。

「俺はシーザーのように、歯の浮くような、
台詞は言えねーけど、俺も、マリーのことが好きだ!」

「ジョセフ…」

二人の告白に、鞠莉は、天井をじっと、見つめた。

「マリーは、どっちを選ぶ?」

「俺にしておけよ!損はさせねーぜ!」

二人は、鞠莉の顔を覗き込み、返事を、
今か今かと、待っていた。

「私は…」

寺院の鐘が鳴り響く、
彼女がどちらを選んだのかは、言うまでもない。

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