四話 決断
「一楓。また、この世界に挑戦しないかしら」
「えっ‥‥‥‥‥‥」
姉から告げられた言葉は、僕に強い衝撃を与える。
何故、いきなりそんな事を言って来たのか。そんな疑問を口にするよりも先に、千聖姉さんは言葉を並べた。
「きっと、何でいきなりと疑問に思っている事だと思うけど、理由は今から説明するわ。‥‥‥この前の練習の日に、マネージャーさんにこの写真を見られてね」
そう言って差し出したスマホには、僕がギターを弾いている写真が映し出されていた。恐らく、中学の時に撮ったものだろう。
「その時に言われたのよ。それがきっかけで、こうして今伝えた訳なのだけどね」
○
『その人、可愛いですね。お知り合いですか?』
練習の休憩中。椅子に腰をかけていた所に、マネージャーが覗き込みように私のスマホに映っていた写真を見て問いかけて来た。
『はい、実は弟なんです。白鷺一楓。と言えば聞いた事はあるんじゃないでしょうか』
『えっ。白鷺一楓さんって、あの千聖さんと一緒に子役として昔出演していたあの白鷺一楓さんですか?』
『ええ、そうですよ』
『そ、そうなんですか‥‥‥。てっきり、最初に見た時は女の子だと思ってました‥‥‥』
『ふふっ、弟は良く女の子に間違えられますもの。無理もないと思います』
相変わらず、弟を目にして男性だと思う人は現れない。まあ、こんな容姿をしているのだし、一目で分かる人なんていないと思うけど。本人がいたら絶対苦い顔をすると容易に想像できてしまう。
そんな弟の一面も、個性も全てが私は大好きで、弟は私にとって大切な存在。弟の顔が他の人に知ってもらえるのも一つの喜びだ。
そう思いながら、私は画面を横に指でスライドする。
『あれ?今度はドラム‥‥‥。というか、弟さんって何処かで見た事があるような気がするのですが‥‥‥』
『そうですね。多分マネージャーさんも一度はこの事務所で必ずお会いした事があると思いますよ』
『えっと‥‥‥。でも、子役時代の時は全然親交なんてありませんでしたし、何なら私は最近マネージャーとして事務所に入りましたから‥‥‥』
うーんと唸りながら頭を悩ませるマネージャー。
考えてもらっているところ悪いが、恐らく気づく事は無いだろう。何せ、弟と会ったことがあると言っても多分目元しか見た事がないからだ。その時の一楓は常にマスクをしていたのだから。
『この事は余り広めてほしく無いので此処だけにして欲しいのですが‥‥‥‥。実は、弟はラジカルサウンドに所属していたんです』
『あ‥‥‥‥えっ!?もしかして、千聖さんの弟さんってラジカルのホワイトさんですか!?』
その言葉に、私は思わず笑みを溢す。弟の存在を理解したマネージャーの驚きの表情と、弟の知名度の高さ。その二つが私の心を高揚させた。
『ええ、一楓はラジカルのベース担当。ホワイトです。驚きましたか?』
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