ダイアゴン横丁と魔法の杖と私
無事お金を手に入れることができた私とハリーは、ハグリッドに連れられてグリンゴッツを出る。
ハリーは眩しそうに眼を細めていたが、ハグリッドはそんなことを気にしていられないといった表情で重そうに口を開いた。
「まずは制服だな」
ハグリッドは遠くに見える看板を顎で差す。
「俺はちょっと漏れ鍋で元気薬をひっかけてくる。さっきのトロッコにはまいった」
ハグリッドは青い顔のまま先ほど通ってきた道を引き返していく。
ダイアゴン横丁に取り残された私とハリーは、少々顔を見合わせた後ハグリッドが示した看板のある店の前まで移動した。
「マダム・マルキンの洋装店……ハグリッドが言ってたのは多分ここよね?」
「うん、そうだと思う」
私は恐る恐る扉を開き、中を覗き込む。
店の中にはずんぐりした女性がおり、覗き込んだ瞬間彼女と目が合った。
「あら、お客さんね。お嬢ちゃんたちも今年からホグワーツ?」
店員の女性、多分彼女がマダム・マルキンだろう。
マルキンは私たち二人を店の中に引きずり込むと、踏み台の上に立たせる。
店の中には既に採寸を行っている少年が一人おり、その横に私が、そして私の横にハリーが並んだ。
マルキンは私の頭から長いローブを被せると、丈に合わせてピンを挿し始める。
「やあ、君も今年からホグワーツかい?」
私の横に立っていた少年に声を掛けられた。
その少年は私のように白い肌をしており、まるで蛇のような容姿をしていた。
「ええ、そうみたい」
「そうか。じゃあホグワーツで必要なものの買い出しってわけだ」
少年は気取った声色で続ける。
「僕の父は隣で教科書を買ってるし、母はどこかで杖を見てる。まあでも、僕が一番欲しいのは箒だね。新しい競技用の箒を買わせてこっそり持ち込んでやる」
少年は自慢げにそう言ったが、私は競技用の箒という単語に興味が湧いた。
「競技用の箒?」
「そうさ。ニンバスの新型が出たんだ。今までの箒とは段違いに速いに違いない。君は箒は持っているかい?」
少年は私の方を振り向くと、私の顔を見て少し固まる。
そして少々顔を赤くして目線を逸らした。
「いいえ、持ってないわ」
「じゃあクィディッチはやらないんだね」
「クィディッチ?」
私がそう聞き返すと、少年は少し意外そうな声を出す。
「クィディッチを知らないの? もしかして、マグル生まれか?」
「マグルって?」
「魔法使いじゃない人間のことさ」
魔法使いじゃない人間の子供が魔法使いになることがあるのか。
いいことを聞いたかもしれない。
「わからないわ。私に両親はいないし」
「死んだの?」
「多分ね」
少年は歯に衣着せぬ物言いでそう言うが、私も特に気にすることなくそう返す。
私自身、私の両親のことなど、割とどうでもいいと思っていた。
既に死んだか、ただ私を捨てただけかはわからないが、どちらにしろロクな親ではないだろう。
「そうか。きっと魔法使いだよ。そうに決まってるさ」
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