幕間3
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「それでは、九校戦メンバー選定会議を開始します」
部活連本部で開かれた九校戦準備会合は、議長席に着いた真由美の一言で開会された。
会議のメンバーは生徒会役員、部活連執行部、実施競技各部部長、そして既に選手・エンジニアの内定通知を受けている者たちだ。議長役は生徒会長の真由美。司会進行は市原鈴音が務め、執行部からは克人の他4名が、内定組には摩利とあずさの姿があった。
「ではまず、本選出場の男子から決めていきましょうか」
長丁場になることを覚悟し(或いは諦め)ながら、真由美は努めて穏やかにこの日の議題を切り出した。
九校戦のメンバーに選ばれるメリットは大きい。
試合で活躍した選手はそれに応じた成績への加点が為される他、メンバーに選ばれるだけで夏季休暇中の課題免除及び一律A評価が与えられる。学校側としても生徒が九校戦で活躍することは大歓迎なため、練習に集中するためのサポートには余念がない。
こうした事情もあって、九校戦に参加するメンバーの選定は毎年侃々諤々の激論が交わされることとなる。
九校戦に採用されている競技の中には一高内でクラブとして存在するものもあり、そうした場合は専門の練習を積んできたレギュラーか、或いは魔法力と適性を鑑みて部外からの選手かで揉めに揉めるためだ。
もちろん、専門に練習を繰り返してきたわけではないにもかかわらず、持ち前の魔法力や実力で椅子を勝ち取る者もいる。三年では真由美や克人、摩利の三巨頭が、二年生であれば服部がそれにあたる。
あずさは選手よりもエンジニア側に適性が高いため、二年生ながらエンジニアチームの筆頭として参加が内定していた。
九校戦に参加できるのは二・三年生が挑む本選と一年生の新人戦で男女各10人。
競技の内訳は『モノリス・コード』、『ミラージ・バット』、『スピード・シューティング』、『クラウド・ボール』、『バトル・ボード』、『アイス・ピラーズ・ブレイク』の計6種目だ。
このうち『モノリス・コード』は男子のみ、『ミラージ・バット』は女子のみ出場可能で、一人の選手が挑めるのは二種目までと定められている。
競技は男女別で行われ、一つの競技に各校がエントリーできるのは三名までなので、必然的に10人のうち5人が二種目に挑み、残り5人が一つの種目に絞ることとなる。優秀な選手を複数の競技に挑戦させて総取りを狙うか、一つの競技に絞って確実に勝利を狙うかは各校の作戦次第ということだ。
今年の一高の布陣は歴代最強との呼び声も高く、三巨頭を筆頭に現時点で実戦魔法師として通用するレベルの生徒が複数人控えている。『数字付き』や百家の生まれも少なくなく、会議は紛糾しながらも本選出場20名の選出はどうにか終えることができた。
「それでは、次は新人戦の出場選手を決めていきます」
束の間の休憩を終え、会議室に戻ってきた真由美が心なしか疲れた声で言った。
彼女が疲労を感じるのも仕方がない。時刻は既に17時を回っており、会議時間も優に2時間を超えている。15分間の休憩を取ったところで焼け石に水なのはこの場にいる誰にとっても同じだった。
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