ハーメルン
モブ崎くんに転生したので、謙虚に生きようと思う
第7話




 新入部員勧誘週間も終わり、第一高校は入学式以来続いていた喧騒からようやく落ち着きを取り戻した。

 計8日に渡る勧誘期間では、達也が大車輪の活躍を見せていた。いや、正確には活躍させられていた(・・・・・・・・・)というべきだろう。

 二日目に背後から『空気弾』を撃たれた達也だが、何者かによる襲撃はその後も後を絶たなかった。
 渡辺委員長にも報告し、僕がバディとなる案も出たのだが、当の達也本人によって断られた。曰く、ただでさえ忙しい巡回で効率を落とすなど論外とのこと。危険時には応援を呼ぶという達也本人の言葉もあって、委員長は変わらず単独での巡回を決めた。

 結果、6日間で達也が受けた襲撃は一度や二度では済まなかった。単に転ばせるだけのような嫌がらせから、先日の『空気弾』のような怪我も辞さない攻撃まで。
 お陰で勧誘期間中、A組の教室は何度か冬が戻ってきていた。その度にほのかや雫がとりなすことで事なきを得てはいたが。

 ともあれ、新入部員勧誘週間は先週末を以て終了し、週が明けた今日からはCADの携行制限が復活する。風紀委員の巡回も当番制となるため、今後は週に二日だけ委員会の仕事に勤めればいい。

 ちなみに期間中の災難を考慮してか、達也は今日から三日間が非番に当てられている。が、恐らく達也に休む暇はないだろう。
 原作と同じ推移をするのであれば、今日、明日、明後日と、達也には女難の相が出ているはずだ。傍から見れば贅沢だと思うことも、達也からすれば面倒事にカテゴライズされるだろうから。

 達也に目を付けられていたことに関しては、あれ以来追加でわかったことはない。
 委員会本部で顔を合わせたときも、巡回中にすれ違ったときも、最低限の話しかすることはなかった。
 余計なことは口にしないよう注意していたから失言はないと思うが、同時に達也から何かしらの兆候を掴むこともできなかった。

 どこまで警戒されているのか。
 どれだけ疑念を抱かれているのか。
 どんな根拠で目を付けるに至ったのか。
 そういった情報はわからないままで、だからこそ細心の注意を払う必要がある。

 原作において、達也に敵と認定された者は彼の持つあらゆる手段、人脈を用いて周辺事情を探られ、達也本人や深雪に危険が及ぶと判断された場合、容赦なく抹殺対象とされてしまう。

 原作知識というジョーカーを持つ僕は、油断すればあっという間に敵認定されかねない、謂わば不発弾を大量に抱えているような状態だ。
 彼の隠している秘密は両手の指じゃ足りない程に多く、どれをとっても一発で敵認定され導火線に火が点けられるレベルである。

 一高に入学する前はこんなつもりじゃなかったのになぁ。

 当初は達也には関わらず、深雪とはただのクラスメイトで、達也の周辺人物とも対立しないよう穏やかに過ごすはずだった。
 それが蓋を開けてみれば、順当に原作のイベントを踏んでしまっている。
 こうなっては無理に避ける方が不自然ではあるんだが、それにしても巻き込まれ過ぎじゃないだろうか。

 人知れずため息を吐いて顔を上げる。
 第6演習室では、現在進行形で魔法実習の授業が行われている。

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