淫紋中 咎
瞼を何かが照らす感覚。
眩さを感じて、意識が覚醒しようとするも身体は怠さからまだ眠りたいと叫んでいた。
悶えるように身じろぎをする。
微睡みの中で転がると、背中にジワリとした痛みが走る。
すると、カンッと何かを叩く音がした。
その音で一気に意識は表層へと持ち上げられて、慌てて瞼を開く。
「....朝でございます。支度が出来れば申し上げてください。御当主様の下へと案内いたします。」
横の方向から男の声が聞こえる。
しかし、男の姿は見えない。
それ以前に、俺の視界には一杯の肌色。
ゆっくりと視線を上へと滑らせる。
目の前には幼いながらも端正な顔をした少女。
少女は目を閉じて、静かに寝息を立てるも呼吸で胸が微かに上下している。
『....私..連れ...して。』
「っっ!!」
その少女を見た瞬間、昨夜の記憶が断片的に蘇る。
俺は、この目の前の少女....咎姫を貪った。
撫麗香を吸い込んでしまって、我を失ってしまった。
目の前に居る少女は...咎姫は言うなれば危険人物だ。
原作知識で分かっていて、それでいて今自分が居るのは原作知識の埒外。
何が起こるか分からず、目の前の少女の地雷や考えも分からない。
それが分かっているのにも関わらず、彼女と交わってしまったのだ。
慌てて起きると、彼女の両腕を後頭部が掻き分ける。
どうやら、俺は彼女の腕の中に眠っていたらしい。
まるで母親に甘える子供のようにこんな幼子の胸に縋りついていたのか...俺は。
記憶はあるが朧気だ。
だからこそ、戦慄している。
今、俺はどうなっている。
どういう状況だ....?
嵌められてなんか薬を盛られて、この座敷牢に入れられてラスボスである帝華王国を弱体化せしめた悪女の幼い頃と同じ牢の中で案の定追っていた撫麗香を吸い込んでヤッちゃって.....。
状況を整理しようと、思考を巡らせるも頭が凄く痛い。
これが香を吸った後の副作用なのだろうか?
そう考えると、不意に目の前の少女がむくりと起き上がる。
昨日のこともあって、咄嗟に身構えてしまう。
しかし身構えるこちらとは対照的に目の前の少女は目が合うと微笑を見せる。
「ぁ....ふふっ....おはよう、ございます、異人さん?」
「っ..あ、あぁ.....。」
警戒しながらも一応彼女に挨拶を返す。
すると彼女はそんな俺の様子がおかしいのかクスクスと口元に手を当てておしとやかに笑った。
まるで昨日、何もなかったかのような....初めてこの牢の中で出くわした時となんら変わらない様子だ。
上気した彼女の肢体と首元に刻まれた噛み跡が昨夜の出来事が確かに起きたことだと痛いくらいに物語っていた。
彼女を見ていると、はだけた襦袢の隙間から彼女の下腹部に何か紋様のような物が目に入る。
その紋様はうっすらとピンクの淡い光を放っているあたかもエロ同人とかで見るような淫紋。
あんなもの、昨日あったか....?
「...起きたのであれば、速く支度をしなさい。御当主様は貴方のことを今か今と待っているのですから。」
檻の外、覆いのような物で顔を隠した男が棒で檻を小突いて俺達を急かす。
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