ハーメルン
風鎧の冒険者
反撃

『おら、さっさと歩け!』

フィッシュルとディルックは神の目を没収され、俺達三人は後ろ手を縛られながら愚人衆に連行された。
とはいえ、俺の神の目だけは肉体と同化してる上、奴らからは見えない場所にあるために無理矢理引きはがされずに済んでいる。

現在は、風龍廃墟内に建てられた奴らの拠点内にて拘束されている。
耳の早い愚人衆といえども、一介の冒険者が最近手に入れた神の目までは知らなかったらしい。
もしくは、モンドに居る連中は知っているが、管轄の違うこいつらにはそれが伝えられていないだけか。
なんにせよ、俺の力だけ自由である事は幸運だと言っていいだろう。

『面白い子ねェ~?』

顔をあげると、雷蛍術師と目が合った。
コイツは訳の分からない思考をしている愚人衆の中でも飛びぬけて訳が分からない。
以前一度だけ遭遇したことがあるが、無害そうな口調で近付いてくる割には攻撃が苛烈で、危うく死にかけた。
積極的に近づいてくる距離感にイライラしていると、雷蛍術師の肩をデッドエージェントが掴み制する。

『おい、雷蛍の、捕虜から離れろ』
『なぁにぃ~?あんたが遊んでくれるの~?』
『うっ……お前、花粉を吸い過ぎてるな、中毒症状が出ているぞ』
『退ぁ屈ねぇ~、そう思わなぁい?』
『霧虚ろのランタンを貸せ、その様子だとろくに手入れもしていないんだろう』
『ねぇねぇ~、あ~そ~ぼ~?』
『しつこい!くっつくな!』

なんかいちゃつきだしたぞコイツ等。
雷蛍術師の方は、誰かに構って貰えてば何でもよかったのか、すぐに俺への興味を無くし、デッドエージェントにしなだれかかっていた。
なんだったのかと困惑していると、不意に風拳使いが近づいてきた。

『お前、さっき妙な術を使ってたな?俺は見たぞ、風元素の拳を使ってたのをな!』

バレてたか。
まぁ、見間違いで済ますのも無理のある話だな。
フィッシュルを連れてきた時点で苛烈西風は解除していたが、だとしても俺の姿は異常に目立つ。
こんな格好をした状態であんな目立つ形態変化をしていれば、警戒されるのも当然か。

『神の目を隠し持ってる可能性がある、風拳の、不用意に近づくな』
『はッ!デッドエージェントは真面目だな!いいぜ、任せるさ』
『おい、立て冒険者』
「なんだよ、武器はもう差し出しただろ」
『誤魔化しは効かんぞ、何を隠してるのか吐け』

雷蛍術師の対応した奴とは別のデッドエージェントに目を付けられたようだ。
トンファーに刃が付いたような、特殊な形状の武器を腕に押し当ててくる。
脅しではなく、このままではそのままの意味で腕を切り落とされそうだ。
とはいっても、押し当てられているのは義手の右腕のほうなので、その心配はない。

「わ、わかった、話すっ」

わざと怯えたような声を出し、抵抗の意志がないように示す。
そして相手に気付かれないように、一緒に拘束されている二人に小声で「合図したら伏せろ」と伝える。
二人は顔色一つ変えずこっちを見て、アイコンタクトで答えた。

「その前に、手の拘束を解いてもらえるか?」
『ダメだ』
「さっきの秘密は俺の腕の中にあるんだ、文字通りな、だから、拘束を解いてもらえないと見せることはできない」

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