命ノ星座
「……フム、そろそろ来る頃だと思いましたよ、風神に導かれし冒険者」
鹿狩りは、もう伽藍洞としていて、人混みがあったのなんて嘘のようだった。
受付のサラさんは落ち着いて仕込みをしており、周りも静かでいい感じだ。
「人の動きというものは運命で決まっているのです、貴方と今日出会う事は、私の占星術によって既にわかっていました」
「いらっしゃいませ!ご注文はお決まりですか?」
「あぁ、ニンジンとお肉のハニーソテーを一つ頼む」
「かしこまりました!少々お待ちください!」
「……話を聞いているのですか?貴方に話しかけているのですよ、冒険者ベント」
魔女のような格好をした少女が、鹿狩りのテーブル席からジト目でこっちを見てくる。
勘違いしないで欲しいのだが、この少女と俺は今日、というか今が初対面だ。
俺は警戒しながらも彼女に話しかけてみる。
「アンタ誰だよ」
「おや、もう知っているとばかり思っていました。私は占星術師です、それ以上言わなければ分かりませんか?」
「……あ、もしかして、アンタが偏屈な占星術師のモナか?」
彼女は顔をしかめてとても嫌そうにする。
面と向かって『偏屈』などと言われれば嫌な気分になるのはわかるが、それを言えばいきなり初対面で知り合いのように、馴れ馴れしく接してくるのもだいぶ失礼だ、これくらいは許してくれてもいいだろう。
「誰ですか、そんなデマを貴方に教えたのは……私の名はアストローギスト・モナ・メギストス、通称『偉大な占星術師モナ』です、今すぐその誤った認識を正して頂きましょう」
「はいはい、"偉大な"ね、"一番愛される"といい、変な肩書きが多過ぎないか?」
「後者は知りませんが、前者は当たり前のことを言ったまでです」
「そうかい」
語りを楽しんでいたウェンティと違い、この少女は無駄に話すのがお嫌いらしい。
変なのがいるが、とにかく今日は疲れた。
その"偉大な占星術師"様の向かいの席に座る。
「それで、私と会ったからには何か用があるのでしょう?占って欲しい事でもあるのですか?」
「いや知らねぇよ、会いに来たとか約束してたとかじゃなくて、今ばったり会っただけじゃねぇか」
「運命でしたからね」
「はぁ……じゃぁ、なんだ、占いの飛び込み営業とでも思えばいいのか?いくら払えばいい?」
「とんでもありません!占星術はお金稼ぎの道具じゃないので、お金なんていりません!」
じゃどうするんだよ…。
どうやらこの無駄にプライドの高い占星術師様は、俺とこの場で出会う事は解ってはいても、そこで何をするかにしては占っていない様で、こちらのアクションを待っているようだった。
だが俺の方もウェンティに『会ってみるといい』としか言われてないし、どうしたものか…。
「お待たせしました!ニンジンとお肉のハニーソテーになります!」
「もう来たのか、ありがとう」
「いえ、そちらのお客様はなにかご注文はよろしいですか?」
「そうですね、せっかくですし、私もなにか頼みましょうか」
そう言いつつモナは懐から財布を取り出すが……そのまま固まり、がっくりとうなだれる。
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